お砂の花ばたけ
… … … … … … … … … … … … …
地から二尺と よう飛ばぬ
季節おくれの もんもん蝶
よろめき縋る 砂の花
坊やはねらふ もんもん蝶
… … … … … … … … … … … … …
その一撃に
花にうつ俯す 蝶のいろ
あゝ おもしろ
花にしづまる 造りもの
「死んでる? 生きてる?」
… … … … … … … … … … … … …
松脂は つよくにほつて
いちんち 坊やは砂場にゐる
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夢からさめて
この夜更《よふけ》に、わたしの眠をさましたものは何の気配《けはひ》か。
硝子窓の向ふに、あゝ今夜も耳原御陵《みゝはらごりよう》の丘の斜面で
火が燃えてゐる。そして それを見てゐるわたしの胸が
何故《なぜ》とも知らずひどく動悸うつのを感ずる。何故《なぜ》とも知らず?
さうだ、わたしは今夢をみてゐたのだ、故里《ふるさと》の吾|古家《ふるや》のことを。
ひと住まぬ大き家の戸をあけ放ち、前栽《せんざい》に面した座敷に坐り
独りでわたしは酒をのんでゐたのだ。夕陽は深く廂に射込んで、
それは現《うつゝ》の日でみたどの夕影よりも美し
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