ゑ》む稚児《ちご》よわが膝に縋《すが》れ
水脈《みを》をつたつて潮《うしほ》は奔《はし》り去れ
わたしがねがふのは日の出ではない
自若《じじやく》として鶏鳴をきく心だ
わたしは岩の間を逍遙《さまよ》ひ
彼らが千の日《ひ》の白昼を招くのを見た
また夕べ獣《けもの》は水の畔《ほとり》に忍ぶだらう
道は遙に村から村へ通じ
平然とわたしはその上を往《ゆ》く
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 早春


野は褐色と淡《あは》い紫、
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田圃《たんぼ》の上の空気はかすかに微温《ぬる》い。
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何処《どこ》から春の鳥は戻る?
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つよい目と
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単純な魂と いつわたしに来《く》る?
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未《ま》だ小川は唄ひ出さぬ、
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が 流れはときどきチカチカ光る。
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それは魚鱗《ぎよりん》?
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なんだかわたしは浮ぶ気がする、
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けれど、さて何を享《う》ける?
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 孔雀の悲しみ 動物園にて


蝶はわ
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