程式の両辺にb/2a[#「b/2a」は分数]の二乗を足《た》して解りやすく意味のあるものとする技術を習得すべきだね。懐疑はそれからで沢山だよ。
とにかく、繰返して言って置くけれども、あの気障《きざ》な・悟ったような・小生意気《こなまいき》な・もの[#「もの」に傍点]の言い方だけは、止してもらいたいな。全く、お前よりも此方《こっち》が恥ずかしくて、穴へでも這入《はい》りたくなる。一昨日《おととい》だって、見ろ。仲間の独身者たちと結婚について話をしていた時の・あのお前の言い草はどうだ? 何と言ったっけな。そう、そう。「どんな面白い作品だって、それを教室でテキストにして使えば途端に詰まらなくなっちまうのと同じで、どんないい女だって、女房にしちまえば、途端に詰まらない女になってしまうんだよ。」か。それを得意気に言った時の・お前のうすっぺらな・やにさがった顔付を思出し、お前の年齢と経験とを併せて考えると、本当に己《おれ》は、恥ずかしいのを通り越して、ゾッと鳥肌が立って来るよ。全く。まだ、ある。いうことは、まだ、あるんだ。鼻持のならない気取屋のくせに、その上、お前はきたならしい[#「きたならしい
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