狼疾記
中島敦
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)何か頻《しき》りに
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)嘴《くちばし》の二|呎《フィート》もありそうな鳥
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「鼬」の「由」に代えて「晏」、第3水準1−94−84]鼠《もぐら》
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[#ここから14字下げ、ページの左右中央に]
養其一指、而失其肩背、而不知也、則為狼疾人也。
[#ここで字下げ終わり]
[#地から4字上げ]――孟子――
[#改ページ]
一
スクリインの上では南洋土人の生活の実写がうつされていた。眼の細い・唇の厚い・鼻のつぶれた土人の女たちが、腰にちょっと布片を捲いただけで、乳房をぶらぶらさせながら、前に置いた皿のようなものの中から、何か頻《しき》りにつまんで喰べている。米の飯らしい。丸裸の男の児が駈けて来る。彼も急いでその米をつまんで口に入れる。口一杯頬張りながら眩《まぶ》しそうに此方へ向けた顔には、眼の上と口の
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