者はブッキラボウに、知らぬ、自分は唯故人のいいつけ通りに事を運んだ迄だ、と答えて、さっさと帰って行った。
二三日後の或夕方、又一人の別の土民青年が私の家の裏口からはいって来た。無愛想な顔をして私の前に立つと、驚いたことに、此の男も亦※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]の入った椰子の葉のバスケットを差出した。マルクープ爺さんから、と言っただけで、怒った様な顔をした其の若者はくるりと後を向いて、又裏口から出て行った。
直ぐ翌日、又一人来た。今度は前の二人より余程愛想のいい・年齢も少しは上らしい男である。マルクープの親戚だといい、死んだ爺さんに頼まれましたとて、椰子バスケットを差出した。今度はもう驚きはせぬ。又、※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]であろう。そうだ。※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]であった。何故こんな贈り物を私が受けるのかと聞くと、爺さんが生前先生には大変お世話になったと言っていましたから、と言った。何故三羽も――それも三回別々の人間に持たせてよこしたのか、という私の疑問に就いては、其の島民は次の様な説明を与えた。恐らく、一人だけに頼んだのでは、猫婆
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