どっしり」に傍点]した、分厚なものを感じている。「ジィキルとハイド」や「誘拐《キッドナップト》」の場合も恐ろしく速く書けたが、書いている最中に確かな自信はなかった。もしかしたら素晴らしいものになっているかも知れないが、或いは又、てんで独りよがりの・恥ずべき駄作かも知れないという懼《おそれ》があった。筆が自分以外のものに導かれ追廻されている恰好《かっこう》だったからだ。今度は違う。同じく、楽に、速く進行してはいるが、今度は明かに自分が凡《すべ》ての作中人物の手綱をしっかり抑えているのだ。出来栄の程度も、自分ではっきり判るように思う。昂奮《こうふん》した自惚《うぬぼれ》によってでなく、落着いた計量によって。之は、最低の見積りによっても、「カトリオーナ」より上に位するものとなろう。まだ完結はしていないが、これは確かである。島の諺《ことわざ》にいう。「鮫《さめ》か鰹《かつお》か、は、尾を見ただけで判る」と。
十二月一日
夜はまだ明けない。
私は丘に立っていた。
夜来の雨は漸くあがったが、風はまだ強い。直ぐ足下から拡がる大傾斜の彼方、鉛色の海を掠《かす》めて西へ逃げる雲脚の速さ。雲の断目
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