ごうき》朴直な此の独裁者は、殆ど涙を浮かべて、「彼を少しも欺さなかった」私の為に、訣別《けつべつ》の歌をうたった。彼は其の島で唯一人の吟遊詩人でもあったのだから。
ハワイのカラカウア王はどうしているか? 聡明で、しかし常に物悲しげなカラカウア。太平洋人種の中で私と対等にマックス・ミューラアを論じ得る唯一の人物。曾《かつ》てはポリネシアの大合同を夢見た彼も、今は自国の衰亡を目前に、静かに諦観《ていかん》して、ハアバアト・スペンサーでも読耽《よみふけ》っているのであろう。
半夜、眠れぬままに、遥かの濤声《とうせい》に耳をすましていると、真蒼な潮流と爽《さわ》やかな貿易風との間で自分の見て来た様々の人間の姿どもが、次から次へと限無く浮かんで来る。
まことに、人間は、夢がそれから作られるような物質であるに違いない。それにしても、其の夢夢の、何と多様に、又何と、もの哀れにもおかしげなことぞ!
十一月××日
ウィア・オヴ・ハーミストン第八章書上。
この仕事も漸《ようや》く軌道に乗って来たことを感ずる。やっと対象がはっきり掴《つか》めて来たという訳だ。書きながら自分でも何かどっしり[#「
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