今日、街の酒場で、この第二の型の人間の一人に出遭った。四十歳前後の男で、私の隣の卓子《テーブル》で独り飲んでいたのだ。(足を組んだ膝頭の辺をがくがく顫《ふる》わせながら。)服装《みなり》はひどいが、顔立は鋭く知的である。目の赤く濁っているのは明らかに酒のせいだが、荒れた皮膚に脣《くちびる》だけいやに紅いのは少々気持が悪い。僅か一時間足らずの会話だったが、此の男が英国一流の大学を出ていることだけは確かに分った。こんな港町には珍しい・完全な英語である。雑貨行商人だといい、トンガから来たが、次の船でトケラウスヘ渡るという。(彼は勿論、私が誰であるかを知りはしない。)商売のことは何もしゃべらない。島々に白人の移入した悪質の病気のことを少し話した。それから、自分には何もないこと。妻も、子も、家も、健康も、希望も。何が彼をこんな生活へ入らせたか、という私の愚問に就いては、何といって名指せるような、小説めいた原因なんかありませんよ。それに、こんな[#「こんな」に傍点]生活とおっしゃるが、今の生活だって、そう特殊なものでもないでしょう? 人間という形態をとって生れて来たという一層特殊な事情に比べればね
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