しそうもない其の特殊な狭い約束の下に於てのみ、優越を誇っているように見える。之は白人種の世界の外にいる者でなければ判らない。勿論、このことは文学にだけ限るのではない。人間や生活やの評価の上にも、西欧文明は、或る特殊な標準《めやす》を作上げ、それを絶対普遍のものと信じている。そういう限られた評価法しか知らない奴に、太平洋の土着民の人格の美点や、その生活の良さなど、てんで解りっこないのだ。
十一月××日
南海の島から島へと渡り歩く白人行商人の中には、極く稀《まれ》に(勿論、大部分は我利我利の奸譎《かんけつ》な商人ばかりだが)次の二つの型の人間を見出すことがある。その一つは、小金を溜《た》めて、故郷《くに》へ帰り余生を安楽に暮らそうというような量見(之が普通の南洋行商人の目的だ)を全然持合せず、唯、南海の風光、生活、気候、航海を愛し、南海を離れたくないがためにのみ、今の商売を止めないといった様な人間。第二は、南海と放浪とを愛する点では同様だが、之はずっと拗《す》ねた烈しい行き方で、文明社会を故意に白眼視し、いわば、生きながら骨を南海の風雨に曝《さら》しているとでもいった虚無的な人間。
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