えば」]ならぬ。蛹《さなぎ》が蛾となって飛廻るためには、今迄自分の織成した美しい繭を無残に喰破らねばならぬのである。
十一月××日
郵船日、エディンバラ版全集の第一巻到着。装幀《そうてい》、紙質その他、大体満足。
書簡、雑誌等を一通り読終った後、欧羅巴《ヨーロッパ》にいる人達と私との間の考え方の距離が益々大きくなって来ていることを感じる。私が余り通俗(非文学的)になり過ぎたか、或いは本来彼等が余り狭い考え方に捉われているか、どちらかだ。曾《かつ》て私は法律などを勉強する輩《やから》を嗤《わら》った。(そのくせ私自身弁護士の資格を有《も》っているのだから、おかしいが)法律とは或る縄張の中に於てのみ権威をもつもの。その複雑な機構に通暁することを誇って見たところで、それは普遍的な人間的価値をもつものではない、と考えたからだ。所で、今、私は、文学圏についても、それを言おうと思う。英国の文学、仏蘭西《フランス》の文学、独逸《ドイツ》の文学、せいぜい広い所で、欧米、乃至《ないし》、白人種の文学。彼等はそういう縄張を設け、自己の嗜好《しこう》を神聖なる規則の如きものに迄祭上げ、他の世界には通用
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