そうして、故郷のそれと違わぬ食事、飲料を与えられ、慾には時々我々と会うことが出来たら、どんなにか有難いのだが。

十月×日
「セント・アイヴス」も完成に近くなったが、急に、「ウィア・オヴ・ハーミストン」を続け度くなって、又、取上げた。一昨年、筆を起してから、何度取上げては、何度筆を投げたことやら。今度こそ何とか纏《まと》まりそうだ。自信というよりも、何だか、そんな気がする。

十月××日
 此の世に年を経れば経る程、私は一層、途方に暮れた小児のような感じを深くする。私は慣れることが出来ない。この世に――見ることに、聞くことに、斯《か》かる生殖の形式に、斯かる成長の過程に、上品にとりすました生の表面と、下卑て狂気じみた其の底部との対照に――之等は、如何に年をとっても、私には慣れ親しめないものだ。私は年をとればとる程、段々裸に、愚かになるような気がする。「大きくなれば解るよ。」と、子供の時分に、よく言い聞かされたものだが、あれは正《まさ》しく嘘であった。自分は何事も益々分らなくなるばっかりだ。…………之は確かに、不安である。しかし又一方、このために、生に対する自分の好奇心が失われないでいる
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