下に殆《ほとん》ど絶対に首を取らせなかった。努力一つで必ず此の悪習は根絶できるのだと、彼は考えていた。
ツェダルクランツの失政のあとを受け、今度のチーフ・ジャスティスは次第に白人や土人の間に於ける政府の信用を回復しつつあるかに見えた。しかし、小規模の暴動や、土民間の紛争や、白人への脅迫は、一八九四年を通じて、何時も絶えることがなかった。
十六
一八九四年二月×日
昨夜例の如く離れの小舎で独り仕事をしていると、ラファエレが提灯《ちょうちん》とファニイからの紙片とを持ってやって来た。うち[#「うち」に傍点]の森の中に暴民共が多く集まっているらしいから、至急来て欲しい旨、書かれている。跣足《はだし》でピストルを携え、ラファエレと共に下りて行く。途中でファニイの上って来るのに会う。一緒に家に入り、気味の悪い一夜を明かす。タヌンガマノノの方から終夜、太鼓と喊声《かんせい》とが聞えた。遥か下の街では月光(月は遅く出た)の下で狂乱を演じていたようだ。うち[#「うち」に傍点]の森にも確かに土民共が潜んでいるらしいが、不思議に騒がない。ひっそりしている方が却《かえ》って不気味だ。月の出ない前
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