よれば、多少病的な分泌に違いないのだ。エマアソンに言わせれば、人の智慧は其の人の有《も》つ希望の有無多少によって計られるのだそうだから、私も希望を失わぬことにしよう。
だが、私は、どうしても芸術家としての自分を大したものと思うことが出来ぬ。限界が余りに明かなのだ。私は自分を単に昔風の職人と考えて来た。さて、今、其の技術が低下したとあっては? 今や私は、何の役にも立たぬ厄介者だ。原因は唯二つ。二十年間の刻苦と、病気とだ。この二つが、牛乳から乳精《クリイム》をすっかり絞りつくして了ったのだ。…………
音高く、森の向うから、雨が近附いて来る。忽《たちま》ち、屋根を叩く猛烈な響。湿った大地の匂。爽《さわや》かに、何かハイランド的な感じだ。窓から外を見れば、驟雨《しゅうう》の水晶棒が万物の上に激しい飛沫《しぶき》を叩きつけている。風。風が快い涼しさを運んで来る。雨はじきに過ぎたが、まだ近処を襲っている音だけは、ザアーッと盛んに聞えている。雨垂の一滴が日本簾《にほんすだれ》を通して私の顔にはねた。窓の前を屋根から、まだ雨水が小川のように落ちている。快し! それは私の心の中にある何かに応えるもの
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