けても暮れても考えたのである。
 ところが、ある日、バイロンとシェリーがいろいろ哲学的な問題を論じ、たまたま生命の原理について熱心に語って、最近におけるダーウィン博士の実験などにも触れたが、そのとき黙って耳を傾けていた著者は、怖ろしい暗示を感じて体を硬直させた。寝床に入っても眼が冴えて眠れなかった。そうだ、死体が生気を吹き返せないこともない。流電気はその可能性を考えさせる。生きるものの構成分子は造られ、接ぎ合され、活きた暖かさを賦与されるにちがいない。「私は見た、――閉じた眼で、しかし鋭い心的視力をもって――自分が接ぎ合せたもののかたわらに蒼ざめてひざまずく、穢らわしい技術の研究者を見た。」
 こうして、見るも怖ろしい怪物の影像が筆者の頭にこびりつき、逐い払っても去らなかった。
「私は恐怖しながら自分の物語を始めた。その考えが心に取り憑き、恐怖の戦慄が全身を駆けめぐり、私の幻想のものすごい影像がまわりの現実に取って代ろうとした。」そこで、翌日、「それは十一月のある恐ろしい夜であった」という書き出しで怪奇な短篇を作りはじめたが、夫シェリーが、それを長篇にすることをすすめた。
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