しもなくはない。シェリーはもともと、科学的な知識の習得と実験に興味をもっていたらしいが、当時の科学の水準が低かったために、中世の煉金術に興味をもち、幽霊を呼び出す実験に耽ったこともあるという。
一八二八年の夏、シェリーと著者はスイスに行き、偶然に詩人バイロンと隣り合せに住むことになったが、その夏は雨が多く、さむざむした日が多かったので、家に閉じこもる日が多く、所在なさにそこにあったドイツの怪談の本を数冊読んだが、そのころ『チャイルド・ハロルド』の第三章を書いていたバイロン卿の提案で、こんな通俗的な幽霊話でなく、みなで一篇ずつ、超自然的な出来事を土台とする高度の文学作品を書こう、ということになった。こういう主題は、その当時の澎沛《ほうはい》たる浪曼的風潮にも合致していたので、みんなで興奮して、さっそく書きはじめようと約束したが、そのうちに天気がよくなって、シェリーとバイロンはアルプスの山に出かけ、その壮大な風景に打たれて、雨の夜の陰気な約束などを忘れてしまった。しかし、この本の著者は忘れなかった。怖ろしさに歯の根が合わなくなり血も凍えてしまうような、そういう神秘的恐怖の物語――それを明
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