一八一八年に出ると、浪曼派運動の風潮に乗じてたちまち大評判となり著者は四百ポンド(現在の私たちの七十万円以上にあたる)の大金を受け取ったというから、読者の少い当時としては最大のベストセラーになったわけである。爾来、今日にいたるまで、怪奇小説としてまず最初に指を屈するものが、この『フランケンシュタイン』であり、今では英語の辞書を開けば、フランケンシュタインということばは、「自分の造ったものに逐われて身を亡ぼすもの」という意味の普通名詞に使われている。この小説のできた動機は、前にも言ったように、俗悪な怪談に対して文学としてすぐれた超現実的な物語を書こうとするにあり、ふつう、そういう興味だけで読まれ、その意味で児童の読みものふうに再話したり、ただ怪物という主題だけを取ってこの作品に関わりのない怪奇映画にしたりされているが、「書きつづけているうちに、ほかのいくつもの動機が加わってきた」と著者みずから述べているように、シェークスピアやミルトンの塁を摩するひとつの荘厳な運命悲劇を書こうとしたことも事実である。ここには、『失楽園』等のサタンがじつは、みずからの背負う[#「背負う」は底本では「背貧う」
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