益勘定 1,000[#「 1,000」に傍線]
計 11,000[#「11,000」に二重傍線]
[#ここで字下げ終わり]
[#ここで横組み終わり]
私は一、〇〇〇フランの利益を得た。そして私は、第二期の営業を開始するのに、一〇、〇〇〇フランの代りに、一一、〇〇〇フランをもってする。その内の五、〇〇〇フランは固定資本であって、六、〇〇〇フランは流動資本である。
一九八 私は出来るだけ簡単な例を示した。だが実際においては、ここに指摘しておかねばならぬ所の正常的で例外でない幾らかの複雑さがある。
一、記帳は総括的になされるのではなくして、常に詳細に行われる。またそれは一回に行われるのではなくして、幾回にも亙ってなされる。すなわち固定資本として五、〇〇〇フランを支払い、原料の買入れに二、〇〇〇フランを支払い、営業費として三、〇〇〇フランを支払ったそのたびに、また商品を六、〇〇〇フランに売ったたびごとに、記帳をする。
二、私は一般に現金で販売しないで、掛で販売する。掛で得意先L、M、Nに販売したときは、商品勘定の貸方と現金の借方に記入しないで、商品勘定の貸方とL、M、N勘定の借方に記入し、彼らが支払いをなすときは、L、M、N勘定の貸方と現金勘定の借方に記入をする。故に正常の状態においては、ある数の得意先勘定借方が現われる。
三、そればかりではない。得意先L、M、Nは一定期間の信用を受けた後、現金でこれを決済しないで、私に宛てた約束手形、または彼らに宛て彼らが引受けた為替手形によって決済せられる。そして私がこれらの手形を受取ったときは、これをL、M、Nの貸方に記入しかつ現金勘定の借方に記入する代りに、L、M、Nの貸方に記入し、受取手形勘定の借方に記入をする。故に正常の状態においては、受取手形勘定の借方があるものである。この勘定は現金勘定に類し、借方と貸方との差は、私の金庫にある約束手形及び為替手形の合計に常に正確に一致する。
四、なおそれだけではない。一般に私は、私の商業手形を収受するのみでなく、これを銀行に譲渡して、期限前の割引を求める。かようにしてこれらの手形を流通するときは、受取手形勘定の貸方に記入しかつ現金勘定の借方に記入する代りに、私は受取手形勘定の貸方に記入しかつ銀行勘定の借方に記入する。銀行が現金で支払をなしたときは、銀行勘定の借方に記入する代りに、現金勘定の借方に記入する。利子に相当する割引料は、もちろん、営業費勘定の借方に記入される。
五、私は、また一般に、現金で買入れをしないで、掛で買入れをする。そして、X、Y、Z等から掛で買入れるときは、商品勘定の借方に記入し、現金勘定の貸方に記入する代りに、商品勘定の借方に記入し、かつX、Y、Z勘定の貸方に記入をする。故に正常状態においては、私はある数の仕入先勘定貸方をもつ。
六、ここでもまた、私は一般に、X、Y、Zに対し現金で支払をしないで一定期間の信用を受けた後、私が振出す約束手形または彼らが振出し私が引受ける為替手形で支払をする。そしてこれらの手形を与えれば、私はX、Y、Z勘定の借方と現金勘定の貸方に記入をしないで、X、Y、Z勘定の借方と支払手形勘定の貸方に記入をする。これらの手形を支払ったときは、支払手形勘定の借方と現金勘定の貸方に記入をする。故に正常状態においては、私は支払手形勘定の貸方をももつ。
七、最後に、貸借対照表を作成するとき、倉庫に商品・原料・生産物が残存していないことはほとんどあり得ない。もしそれがあり得るとしたら、それは、各営業期間の終りにおいてすべての活動が中絶したことを意味する。この中絶は憂うべきことであり、不必要なことである。ところでこれと反対に実際には、私は家具を販売すれば、それに引続いて材木その他の原料を購うのである。棚卸をするのは、これらの商品についてである。私は常に営業費を商品勘定の借方に移す。しかし商品勘定の差引残高を求める代りに、棚卸された商品の正確な額だけが借方に残るように損益勘定によってバランスするのである。その理由は次の如くである。Md[#「d」は下付き小文字], Mc[#「c」は下付き小文字] はそれぞれ商品勘定の借方と貸方であり、Fは営業費の借方残高であり、Iは棚卸の額であるとすれば、利益がある場合には、商品勘定の借方 Md[#「d」は下付き小文字]+F にPを加えて、
[#ここから4字下げ]
(Md[#「d」は下付き小文字]+F+P)−Mc[#「c」は下付き小文字]=I
[#ここで字下げ終わり]
とならねばならぬ。商品勘定は借方にIを残し、損益勘定はPを貸方に残す。損失の場合には、商品勘定の貸方 Mc[#「c」は下付き小文字] に金額Pを加えて、
[#ここから4字下げ]
(Md[#「d」は下付き小文字]+F)−(Mc[#「c」は下付き小文字]+P)=I
[#ここで字下げ終わり]
とならねばならぬ。商品勘定は、この場合にも、借方にIを残し、損益勘定はPを借方に残す。ところで右の二つのPの額は、ただ一つの方程式、
[#ここから4字下げ]
Md[#「d」は下付き小文字]+F−I±P=Mc[#「c」は下付き小文字]
[#ここで字下げ終わり]
によって与えられる。この方程式は、次のような考察から直接に導き出すことも出来る。すなわち、買入れた原料の金額に、支払われた営業費を加え、これから使用せられなかった原料と在庫商品とを控除し、利益があればその額を加え、損失があればその額を控除すれば、差引残高は販売金額に等しい。
以上のようにして、資産を構成するものとして、現金及び固定資本または建設費の項目に、得意先勘定、受取手形、銀行勘定、棚卸商品が加わり、負債を構成するものとしては、資本主、損益の項目に仕入先勘定、支払手形等が加わる。これらを附け加えて、工業企業の普通の貸借対照表が得られる。農業・商業・金融業の貸借対照表もこれに類似したものである。
一九九 企業者が、いかにして貸借対照表によって、いつでも損益の状態を、原理上知り得るかは、右の説明によって明らかになった。以上で、私の定義は理論的にも実際的にも確立せられたのであるが、今は企業者が利益も得ず、損失も蒙らないものと想像し、また既にいったように(第一七九節)、原料・新資本・新収入・金庫にある流通貨幣の形態をとった企業者の流動資金及び収入の貯蔵・流通貨幣並びに貯蓄貨幣の形態をとった消費者の流動資金を捨象し、生産物と生産用役の市場価格が、均衡状態において、いかにして数学的に決定せられるかを示そうと思う。
[#改ページ]
第二十章 生産方程式
[#ここから8字下げ]
要目 二〇〇 商品と用役の利用、所有量。二〇一 用役の供給量と生産物の需要量との等価の方程式。極大満足の方程式。用役の部分的供給と生産物の部分的需要の方程式。二〇二 (1) 用役の総供給の方程式。(2) 生産物の総需要の方程式。二〇三 製造係数。(3) 用役の供給と需要の均等の方程式。(4) 生産物の売価と原価の均等の方程式。二〇四 製造係数の固定性。二〇五 原料。二〇六 2m+2n−1 個の未知数に対する同数の方程式。二〇七 実際上の解法。
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二〇〇 捨象し得るものを捨象した後、問題の本質的な与件として残った最初の六項の用役(第一七八節)に立ち帰り、(T)、(T')、(T'') ……及び (P)、(P')、(P'') ……並びに (K)、(K')、(K'') ……をそれぞれ一定の期間中に得られる土地用役・労働及び利殖とする。そしてこれらの用役の量は、(一)自然的または人為的単位例えば土地のヘクタール・人の一人・資本の一単位など、(二)時間的単位例えば一日など、の二つの単位によって秤量せられるものと仮定する。故にそれぞれの土地の一ヘクタールの地用のある日数の量、それぞれの人の労働のある日数の量、それぞれの資本の利殖のある日数の量があるわけである。これらの用役の種類の数をnとする。
右に定義せられた用役によって、我々は、同じ期間中に消費せられる(A)、(B)、(C)、(D)……の生産物を製造することが出来る。この製造はあるいは直接になされ、あるいは原料と称せられて既に存在する生産物を仲介として行われる。換言すれば、この製造は、あるいは地用・労働・利殖の結合により、あるいは地用・労働・利殖を原料に適用することによって行われる。だがこの第二の場合が第一の場合に還元せしめられることは後に述べる如くである。かくして製造せられた生産物の種類の数をmとする。
二〇一 生産物は、各個人に対し私が既に r=φ(q) の形をとる利用方程式または欲望方程式で表わした利用をもつ(第七五節)。けれども用役それ自身もまた、各個人に対し、直接的利用をもつ。そして我々は随意に土地・人的能力・資本の用役の全部または一部を賃貸することも出来れば、自分のために保留しておくことも出来るのみでなく、また、地用・労働・利殖を、生産物に変形する企業者の資格においてではなく、直接に消費する消費者の資格において獲得することも出来る。換言すれば、地用・労働・利殖を、生産用役としてではなく、消費用役として得ることが出来る。私は先に第四・五・六項目の下に分類せられた用役を並べて、第一・二・三項目の下に分類せられた用役を一つの範疇に入れて、これを認めた(第一七八節)。故に用役もまた商品であって、各個人に対するその利用は r=φ(q) の形態をとる利用曲線または欲望曲線によって表わされ得る。
これだけを前提として、ある人が(T)の qt[#「t」は下付き小文字] を、(P)の qp[#「p」は下付き小文字] を、(K)の qk[#「k」は下付き小文字] を処分するとする。r=φt[#「t」は下付き小文字](q), r=φp[#「p」は下付き小文字](q), r=φk[#「k」は下付き小文字](q) ……をそれぞれ用役(T)、(P)、(K)……がこの個人に対して一定時間中にもつ利用または欲望曲線であるとし、r=φa[#「a」は下付き小文字](q), r=φb[#「b」は下付き小文字](q), r=φc[#「c」は下付き小文字](q), r=φd[#「d」は下付き小文字](q) ……をそれぞれ生産物(A)、(B)、(C)、(D)……がこの同じ人に対して一定時間中にもつ利用または欲望曲線であるとする。また pt[#「t」は下付き小文字], pp[#「p」は下付き小文字], pk[#「k」は下付き小文字] ……を(A)で表わした用役の市場価格であるとし、pb[#「b」は下付き小文字], pc[#「c」は下付き小文字], pd[#「d」は下付き小文字] ……を生産物の市場価格とする。ot[#「t」は下付き小文字], op[#「p」は下付き小文字], ok[#「k」は下付き小文字] ……をこれらの価格において有効に供給せられた用役の量とする。これらの量は正であり得、この場合にはこれらの量は供給せられた量を示す。またそれらは負であり得、その場合には需要せられる量を示す。最後に da[#「a」は下付き小文字], db[#「b」は下付き小文字], dc[#「c」は下付き小文字], dd[#「d」は下付き小文字] ……を均衡価格において有効に需要せられる生産物の量とする。現に存在する狭義の資本の償却及び保険と新しい狭義の資本の創造を目的とする貯蓄とは、これを次の編に述べることとして捨象すれば、これらの諸量とそれらの価格との間に、方程式
[#ここから4字下げ]
ot[#「t」は下付き小文字]pt[#「t」は下付き小文字]+op[#「p」は下付き小文字]pp[#「p」は下付き小文字]+ok[#「k」は下付き小文字]pk[#「k」は下付き小文字]+ …… =da[#「a」は下付き小文字]+db[#「b」は下付き小文字]pb[#「b」は下付き小文字]+dc[#「c」は下付き小文字]pc[#「c」は下付き
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