ノ交換される事実は、方程式
[#ここから4字下げ]
vb[#「b」は下付き小文字]=24 フラン
[#ここで字下げ終わり]
によって表わされる。この方程式は次の如くいい表わされる。――「小麦は一ヘクトリットルで二四フランの価値がある。」
しかしながら問題となるこの第二点は、第一点と同じく、誤である。この関係においても、第一点の関係においてと同じく、価値と長さ、重量、容積との間には何らの類似もない。与えられた長さ例えば家の間口の長さを測るときには、三つの事柄がある。この間口の長さ、子午線の四分の一の百万分の一、及び第一の長さの第二の長さすなわち尺度に対する比が、それである。価値がこれに類似し、与えられた位置と時とにおいて与えられた価値例えば一ヘクトリットルの小麦の価値を同様に測り得るためには、価値にも三つの事柄がなければならぬ。小麦の一ヘクトリットルの価値、九〇%銀半デカグラムの価値、第一の価値が第二の価値すなわち尺度に対する比。ところでこれら三つの事柄のうち、第一と第二は存在しない。第三のみが存在する。私の分析はこのことを完全に証明した。価値は本質的に相対的なものである。もちろん相対的価値の背後には絶対的なあるもの、すなわち充された最後の欲望の強度、すなわち稀少性がある。けれども絶対的であって相対的でないこれらの稀少性は、主観的であり、個人的であって、現実的でもなく、客観的でもない。それらは私共のうちにあって、事物のうちにあるのではない。故にこれらを交換価値に置き換えることは出来ない。そこで、稀少性[#「稀少性」に傍点]なるものも存在せねば、九〇%銀の半デカグラムの価値[#「九〇%銀の半デカグラムの価値」に傍点]なるものも実在せず、フラン[#「フラン」に傍点]という語は実在しないものの名称であるということになる。科学が認めなければならぬこの真理をセイは完全に認めたのであった。
一四七 だがそうだからといって、価値と富とを測定し得ないということにはならない。ただ私共の尺度の単位はある商品のある量でなければならず、商品のこの量の価値であってはならぬという結果が出てくるのみである。
例の如く(A)を価値尺度財とし、(A)の量の単位を測定単位とする。価値は自ら測定せられる。なぜなら価値の比は交換せられた商品の量に反比例して直接に現われるから。かくて、(B)、(C)、(D)……の価値の(A)の価値に対する比は、(B)の一、(C)の一、(D)の一に交換せられた(A)の単位数、すなわち(A)で表わした(B)、(C)、(D)……の価格に現われる。
これらの条件の下で、(A)で表わした(B)、(C)、(D)……の価格を簡単に pb[#「b」は下付き小文字], pc[#「c」は下付き小文字], pd[#「d」は下付き小文字] ……で表わし、Qa,1[#「a,1」は下付き小文字] を
[#ここから4字下げ]
Qa,1[#「a,1」は下付き小文字]=qa,1[#「a,1」は下付き小文字]+qb,1[#「b,1」は下付き小文字]pb[#「b」は下付き小文字]+qc,1[#「c,1」は下付き小文字]pc[#「c」は下付き小文字]+qd,1[#「d,1」は下付き小文字]pd[#「d」は下付き小文字]+ ……
[#ここで字下げ終わり]
となるように、交換者(1)によって所有せられる(A)、(B)、(C)、(D)……の量の価値の合計に等しい(A)の量とする。私共は、等価値配分の原理により、qa,1[#「a,1」は下付き小文字], qb,1[#「b,1」は下付き小文字], qc,1[#「c,1」は下付き小文字], qd,1[#「d,1」は下付き小文字] ……を変化せしめることが出来る。もし配分せられた新しい量が、右の方程式を(同時に商品の合計量が等しいとの条件をも)満足すれば、これは交換者(1)に、市場において pb[#「b」は下付き小文字], pc[#「c」は下付き小文字], pd[#「d」は下付き小文字] ……の価格で、この価格においての最大満足を得せしめる所の(A)、(B)、(C)、(D)……の量を獲得せしめる。故に商品のこの種々なる量の総量と最大満足を与える量とを表わす所の Qa,1[#「a,1」は下付き小文字] は、交換者(1)が所有する富の量でもある。
同一の条件の下において、
[#ここから4字下げ]
Qa,2[#「a,2」は下付き小文字]=qa,2[#「a,2」は下付き小文字]+qb,2[#「b,2」は下付き小文字]pb[#「b」は下付き小文字]+qc,2[#「c,2」は下付き小文字]pc[#「c」は下付き小文字]+qd,2[#「d,2」は下付き小文字]pd[#「d」は下付き小文字]+ ……
Qa,3[#「a,3」は下付き小文字]=qa,3[#「a,3」は下付き小文字]+qb,3[#「b,3」は下付き小文字]pb[#「b」は下付き小文字]+qc,3[#「c,3」は下付き小文字]pc[#「c」は下付き小文字]+qd,3[#「d,3」は下付き小文字]pd[#「d」は下付き小文字]+ ……
[#ここで字下げ終わり]
であるとする。Qa,2[#「a,2」は下付き小文字], Qa,3[#「a,3」は下付き小文字] ……は交換者(2)、(3)……によって所有せられる富の量である。これらの量は同じ種類の単位から成立しているから、Qa,1[#「a,1」は下付き小文字] とも、また Qa,2[#「a,2」は下付き小文字], Qa,3[#「a,3」は下付き小文字] ……相互の間でも比較せられ得る。
最後に Qa[#「a」は下付き小文字], Qb[#「b」は下付き小文字], Qc[#「c」は下付き小文字], Qd[#「d」は下付き小文字] ……を市場に存在する(A)、(B)、(C)、(D)……の総量であるとし、かつ
[#ここから4字下げ]
Qa[#「a」は下付き小文字]=Qa,1[#「a,1」は下付き小文字]+Qa,2[#「a,2」は下付き小文字]+Qa,3[#「a,3」は下付き小文字]+ ……
=Qa[#「a」は下付き小文字]+Qb[#「b」は下付き小文字]pb[#「b」は下付き小文字]+Qc[#「c」は下付き小文字]pc[#「c」は下付き小文字]+Qd[#「d」は下付き小文字]pd[#「d」は下付き小文字]+ ……
[#ここで字下げ終わり]
であるとする。Qa[#「a」は下付き小文字] は市場に存在する富の総量である。そしてこの量は、Qa,1[#「a,1」は下付き小文字], Qa,2[#「a,2」は下付き小文字], Qa,3[#「a,3」は下付き小文字] ……に比較することも出来、また Qa[#「a」は下付き小文字], Qb[#「b」は下付き小文字]pb[#「b」は下付き小文字], Qc[#「c」は下付き小文字]pc[#「c」は下付き小文字], Qd[#「d」は下付き小文字]pd[#「d」は下付き小文字] ……に比較せられることも出来る。
一四八 以上に述べたことが価値及び富の測定の手段の真の役割である。だが一般に価値尺度財として役立つ商品はまた貨幣(monnaie)としても役立つものであって、交換の媒介たる職分をつくす。その場合には価値尺度財の単位は貨幣の単位となる。価値尺度財たる職能と交換の媒介たる職能とは異る二つの職能であって、兼ねられていても、明らかに区別せられなければならない。私は価値尺度財たる職分を説明した後を承《う》けて、交換の媒介物たる職能の概念を明らかにせねばならない。
(A)を交換の媒介物として役立たしめるために指定せられた商品であるとする。また例の如く、pb[#「b」は下付き小文字]=μ, pc[#「c」は下付き小文字]=π, pd[#「d」は下付き小文字]=ρ ……であるとする。最大満足の条件により、これら一般均衡価格においては、商品(A)、(B)、(C)、(D)……の有効に供給せられた量に等しい有効に需要せられる量 M, P, R …… N, F, H …… Q, G, K …… S, J, L ……がある。そして直接交換の仮定においては、この交換は次の方程式に従って行われる。
[#ここから4字下げ]
Nvb[#「b」は下付き小文字]=Mva[#「a」は下付き小文字], Qvc[#「c」は下付き小文字]=Pva[#「a」は下付き小文字], Svd[#「d」は下付き小文字]=Rva[#「a」は下付き小文字] ……
Gvc[#「c」は下付き小文字]=Fvb[#「b」は下付き小文字], Jvd[#「d」は下付き小文字]=Hvb[#「b」は下付き小文字], Lvd[#「d」は下付き小文字]=Kvc[#「c」は下付き小文字] ……
[#ここで字下げ終わり]
一四九 しかし実際に近いように貨幣を介在せしめる仮定においては、これと異る。(A)を貨幣とし、(B)を小麦とし、(C)をコーヒーとする。実際においては、小麦の生産者は、小麦を貨幣と交換に売り、コーヒーの生産者も同様である。かようにして得られる貨幣でコーヒーを購い、小麦を購う。これがここで私が仮定しようとすることである。(A)の所有者は、商品である貨幣を所持する事実によって、仲介者となる。(B)の所有者は、売ろうとする(B)のすべてを、価格 μ で(A)の所有者に売り、買おうとするすべての(C)、(D)、……等を価格 π,ρ ……で買う。これらの操作は方程式
[#ここから4字下げ]
(N+F+H+ ……)vb[#「b」は下付き小文字]=(M+Fμ+Hμ+ ……)va[#「a」は下付き小文字]
(Fμ=Gπ)va[#「a」は下付き小文字]=Gvc[#「c」は下付き小文字], (Hμ=Jρ)va[#「a」は下付き小文字]=Jvd[#「d」は下付き小文字] ……
[#ここで字下げ終わり]
によって表わされる。
(C)、(D)……の所有者も同様の行動をなすであろう。それらは方程式
[#ここから4字下げ]
(Q+G+K+ ……)vc[#「c」は下付き小文字]=(P+Gπ+Kπ+ ……)va[#「a」は下付き小文字]
(Gπ=Fμ)va[#「a」は下付き小文字]=Fvb[#「b」は下付き小文字], (Kπ=Lρ)va[#「a」は下付き小文字]=Lvd[#「d」は下付き小文字] ……
(S+J+L+ ……)vd[#「d」は下付き小文字]=(R+Jρ+Lρ+ ……)va[#「a」は下付き小文字]
(Jρ=Hμ)va[#「a」は下付き小文字]=Hvb[#「b」は下付き小文字], (Lρ=Kπ)va[#「a」は下付き小文字]=Kvc[#「c」は下付き小文字] ……
[#ここで字下げ終わり]
によって表わされる。
一五〇 私はここで、媒介者としての(A)の買とまた売とは、この商品それ自体の価格には何らの影響を与えることなしに行われると仮定した。実際においては、事情はこれと全く異る。各交換者は交換の目的で自分のために貨幣の貯蔵をもち、従ってこれらの条件の下において、商品を貨幣として用いるときは、この価値は影響を受ける。このことについては後に研究するであろう。しかしこの研究を留保しても、貨幣の介在と通貨の介在との間に完全な類似があることが解るであろう。実際二つの方程式
[#ここから4字下げ]
[#式(fig45210_119.png)入る]
[#ここで字下げ終わり]
から
[#ここから4字下げ]
[#式(fig45210_120.png)入る]
[#ここで字下げ終わり]
を引出し得ると同様に、また二つの方程式
[#ここから4字下げ]
(Fμ=Gπ)va[#「a」は下付き小文字]=Gvc[#「c」は下付き小文字], (Gπ=Fμ)va[#「a」は下付き小文字]=Fvb[#「b」は下付き小文字]
[#ここで字下げ終わり]
から、
[#ここから4字下げ]
Gvc[#「c」は下付き小文字]=Fvb[#「b」は下付き小文字]
[#ここで字下げ終わり]
を引出すことが出来る。よって、欲するなら
前へ
次へ
全58ページ中39ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
手塚 寿郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング