セようとし、また他の一部を譲渡して(B)商品を得ようとしている人々が来る所の一つの市場を考えてみる。
 これだけを前提として、多くの人々のうち例えば(B)の一所有者をとり、先になした推論(第五〇節)を展開すると、ここでもまた、この個人のせり上げの傾向が厳密に確定せられ得るといい得よう。
 実際、(B)の qb[#「b」は下付き小文字] 量を所有し、このうちのある量 ob,a[#「b,a」は下付き小文字] を(A)のある量 da,b[#「a,b」は下付き小文字] と方程式
[#ここから4字下げ]
da,b[#「a,b」は下付き小文字]va[#「a」は下付き小文字]=ob,a[#「b,a」は下付き小文字]vb[#「b」は下付き小文字]
[#ここで字下げ終わり]
に従って交換しようとし、また他のある量 ob,c[#「b,c」は下付き小文字] を(C)のある量 dc,b[#「c,b」は下付き小文字] と方程式
[#ここから4字下げ]
dc,b[#「c,b」は下付き小文字]vc[#「c」は下付き小文字]=ob,c[#「b,c」は下付き小文字]vb[#「b」は下付き小文字]
[#ここで字下げ終わり]
に従って交換しようとして市場に現われる人は、(A)の da,b[#「a,b」は下付き小文字] 量と(C)の dc,b[#「c,b」は下付き小文字] 量とを得ると共に、(B)のy量すなわち
[#ここから4字下げ]
[#式(fig45210_069.png)入る]
[#ここで字下げ終わり]
を残して帰っていくであろう。そして量 qb[#「b」は下付き小文字], [#式(fig45210_016.png)入る] または pa,b[#「a,b」は下付き小文字], da,b[#「a,b」は下付き小文字], [#式(fig45210_070.png)入る] または pc,b[#「c,b」は下付き小文字], dc,b[#「c,b」は下付き小文字] と y との間には、常に、
[#ここから4字下げ]
qb[#「b」は下付き小文字]=y+da,b[#「a,b」は下付き小文字]pa,b[#「a,b」は下付き小文字]+dc,b[#「c,b」は下付き小文字]pc,b[#「c,b」は下付き小文字]
[#ここで字下げ終わり]
の関係がある。
 この(B)の所有者は、市場に到着する以前には、[#式(fig45210_016.png)入る]すなわち pa,b[#「a,b」は下付き小文字] 及び[#式(fig45210_070.png)入る]すなわち pc,b[#「c,b」は下付き小文字] がいかなるものであるかを知らない。だが市場に到着すると同時にこれを知るようになることは確かであり、一度 pa,b[#「a,b」は下付き小文字] 及び pc,b[#「c,b」は下付き小文字] の値が知られたとすれば、da,b[#「a,b」は下付き小文字], dc,b[#「c,b」は下付き小文字] の値が決定せられ、そこで先に示した方程式によって、yの値もまた決定することは確かである。もちろん、pa,b[#「a,b」は下付き小文字] のみでなく pc,b[#「c,b」は下付き小文字] を知らなければ da,b[#「a,b」は下付き小文字] を決定し得ないし、また pc,b[#「c,b」は下付き小文字] のみでなく pa,b[#「a,b」は下付き小文字] をも知らなければ dc,b[#「c,b」は下付き小文字] を決定し得ない。私共はこれを認めねばならぬ。しかしまた、pa,b[#「a,b」は下付き小文字] と pc,b[#「c,b」は下付き小文字] とが知られれば、これによって、da,b[#「a,b」は下付き小文字] と dc,b[#「c,b」は下付き小文字] とが決定せられることも認めざるを得ない。
 一〇六 ところで、ここでもまた、da,b[#「a,b」は下付き小文字] 及び dc,b[#「c,b」は下付き小文字] とこれら商品の価格との直接関係、すなわち(B)をもってする(A)の有効需要及び(C)の有効需要と pa,b[#「a,b」は下付き小文字], pc,b[#「c,b」は下付き小文字] との直接関係を、数学で表わすことは容易である。この関係は、この人のせり上げの傾向に相応するものであるが、それは二つの方程式
[#ここから4字下げ]
da,b[#「a,b」は下付き小文字]=fa,b[#「a,b」は下付き小文字](pa,b[#「a,b」は下付き小文字], pc,b[#「c,b」は下付き小文字])
dc,b[#「c,b」は下付き小文字]=fc,b[#「c,b」は下付き小文字](pa,b[#「a,b」は下付き小文字], pc,b[#「c,b」は下付き小文字])
[#ここで字下げ終わり]
によって厳密に表わされる。同様にして、(B)の他の所有者の(A)及び(C)に対するせり上げの傾向を表わす方程式を得ることが出来る。そして最後に、部分的需要のこれらの方程式を単純に合計することによって、(B)のすべての所有者のせり上げの傾向を示す総需要の二つの方程式
[#ここから4字下げ]
Da,b[#「a,b」は下付き小文字]=Fa,b[#「a,b」は下付き小文字](pa,b[#「a,b」は下付き小文字], pc,b[#「c,b」は下付き小文字])
Dc,b[#「c,b」は下付き小文字]=Fc,b[#「c,b」は下付き小文字](pa,b[#「a,b」は下付き小文字], pc,b[#「c,b」は下付き小文字])
[#ここで字下げ終わり]
が得られる。
 同様にして(C)の所有者の全部のせり上げの傾向を表わす総需要の二つの方程式
[#ここから4字下げ]
Da,c[#「a,c」は下付き小文字]=Fa,c[#「a,c」は下付き小文字](pa,c[#「a,c」は下付き小文字], pb,c[#「b,c」は下付き小文字])
Db,c[#「b,c」は下付き小文字]=Fb,c[#「b,c」は下付き小文字](pa,c[#「a,c」は下付き小文字], pb,c[#「b,c」は下付き小文字])
[#ここで字下げ終わり]
が得られる。
 同様にして、最後に(A)の所有者の全部のせり上げの傾向を表わす総需要の二つの方程式
[#ここから4字下げ]
Db,a[#「b,a」は下付き小文字]=Fb,a[#「b,a」は下付き小文字](pb,a[#「b,a」は下付き小文字], pc,a[#「c,a」は下付き小文字])
Dc,a[#「c,a」は下付き小文字][#「c,a」底本では「b,a」]=Fc,a[#「c,a」は下付き小文字](pb,a[#「b,a」は下付き小文字], pc,a[#「c,a」は下付き小文字])
[#ここで字下げ終わり]
が得られる。
 一〇七 その外に、(B)と(A)または(C)との交換の二つの交換方程式
[#ここから4字下げ]
Db,a[#「b,a」は下付き小文字]=Da,b[#「a,b」は下付き小文字]pa,b[#「a,b」は下付き小文字]
Db,c[#「b,c」は下付き小文字]=Dc,b[#「c,b」は下付き小文字]pc,b[#「c,b」は下付き小文字]
[#ここで字下げ終わり]
が得られる。
 また、(C)と(A)または(B)の交換の二つの交換方程式
[#ここから4字下げ]
Dc,a[#「c,a」は下付き小文字]=Da,c[#「a,c」は下付き小文字]pa,c[#「a,c」は下付き小文字]
Dc,b[#「c,b」は下付き小文字]=Db,c[#「b,c」は下付き小文字]pb,c[#「b,c」は下付き小文字]
[#ここで字下げ終わり]
が得られる。
 最後に、(A)と(B)または(C)との交換の二つの交換方程式
[#ここから4字下げ]
Da,b[#「a,b」は下付き小文字]=Db,a[#「b,a」は下付き小文字]pb,a[#「b,a」は下付き小文字]
Da,c[#「a,c」は下付き小文字]=Dc,a[#「c,a」は下付き小文字]pc,a[#「c,a」は下付き小文字]
[#ここで字下げ終わり]
が得られる。
 結局、三商品のそれぞれで表わした価格六個と、相互に交換せられる三商品のそれぞれの交換合計量六個と合せて、十二個の未知数の間に、十二の方程式が成り立つ。
 一〇八 いまある市場に、(A)、(B)、(C)、(D)……等m種の商品があるとする。この場合にも、二商品及び三商品の場合になしたと同じ推論――これを繰り返し述べるのは無用であろう――によって、まず(A)をもってする(B)、(C)、(D)……の有効需要の方程式 m−1 個
[#ここから4字下げ]
Db,a[#「b,a」は下付き小文字]=Fb,a[#「b,a」は下付き小文字](pb,a[#「b,a」は下付き小文字], pc,a[#「c,a」は下付き小文字], pd,a[#「d,a」は下付き小文字] ……)
Dc,a[#「c,a」は下付き小文字]=Fc,a[#「c,a」は下付き小文字](pb,a[#「b,a」は下付き小文字], pc,a[#「c,a」は下付き小文字], pd,a[#「d,a」は下付き小文字] ……)
Dd,a[#「d,a」は下付き小文字]=Fd,a[#「d,a」は下付き小文字](pb,a[#「b,a」は下付き小文字], pc,a[#「c,a」は下付き小文字], pd,a[#「d,a」は下付き小文字] ……)
……………………………………
[#ここで字下げ終わり]
を得ることが出来る。また(B)をもってする(A)、(C)、(D)……の有効需要の方程式 m−1 個
[#ここから4字下げ]
Da,b[#「a,b」は下付き小文字]=Fa,b[#「a,b」は下付き小文字](pa,b[#「a,b」は下付き小文字], pc,b[#「c,b」は下付き小文字], pd,b[#「d,b」は下付き小文字] ……)
Dc,b[#「c,b」は下付き小文字]=Fc,b[#「c,b」は下付き小文字](pa,b[#「a,b」は下付き小文字], pc,b[#「c,b」は下付き小文字], pd,b[#「d,b」は下付き小文字] ……)
Dd,b[#「d,b」は下付き小文字]=Fd,b[#「d,b」は下付き小文字](pa,b[#「a,b」は下付き小文字], pc,b[#「c,b」は下付き小文字], pd,b[#「d,b」は下付き小文字] ……)
……………………………………
[#ここで字下げ終わり]
を得る。更にまた(C)をもってする(A)、(B)、(D)……の有効需要の方程式 m−1 個
[#ここから4字下げ]
Da,c[#「a,c」は下付き小文字]=Fa,c[#「a,c」は下付き小文字](pa,c[#「a,c」は下付き小文字], pb,c[#「b,c」は下付き小文字], pd,c[#「d,c」は下付き小文字] ……)
Db,c[#「b,c」は下付き小文字]=Fb,c[#「b,c」は下付き小文字](pa,c[#「a,c」は下付き小文字], pb,c[#「b,c」は下付き小文字], pd,c[#「d,c」は下付き小文字] ……)
Dd,c[#「d,c」は下付き小文字]=Fd,c[#「d,c」は下付き小文字](pa,c[#「a,c」は下付き小文字], pb,c[#「b,c」は下付き小文字], pd,c[#「d,c」は下付き小文字] ……)
……………………………………
[#ここで字下げ終わり]
を得ることが出来る。更にまた(D)をもってする(A)、(B)、(C)……の有効需要の方程式 m−1 個
[#ここから4字下げ]
Da,d[#「a,d」は下付き小文字]=Fa,d[#「a,d」は下付き小文字](pa,d[#「a,d」は下付き小文字], pb,d[#「b,d」は下付き小文字], pc,d[#「c,d」は下付き小文字] ……)
Db,d[#「b,d」は下付き小文字]=Fb,d[#「b,d」は下付き小文字](pa,d[#「a,d」は下付き小文字], pb,d[#「b,d」は下付き小文字]
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