正であり、pa[#「a」は下付き小文字] が増加すれば、無限に減少していく。そしてそれは、pa[#「a」は下付き小文字] が 0 と無限の中間のある値をとるとき、ゼロである。Oa[#「a」は下付き小文字] についていえば、この量は、pa[#「a」は下付き小文字]=0 となるとき、ゼロであり、pa[#「a」は下付き小文字] が正のある値をとってもなお、ゼロである。しかしなお pa[#「a」は下付き小文字] が増加すれば、この量も増加するけれども、無限には増加しない。それは、少くともある最大の値に達し、pa[#「a」は下付き小文字] がなお増加すれば、減少する。pa[#「a」は下付き小文字]=∞ となれば、それはゼロとなる。だから、Oa[#「a」は下付き小文字] がゼロであることを止める以前に、Da[#「a」は下付き小文字] がゼロとなって、解法不能となるのでなければ、Oa[#「a」は下付き小文字] と Da[#「a」は下付き小文字] とを相等しからしめる pa[#「a」は下付き小文字] のある値が存在する。この値を見出すには、もし Da[#「a」は下付き小文字]>Oa[#「a」は下付き小文字] ならば pa[#「a」は下付き小文字] を増加せねばならぬし、もしまた Da[#「a」は下付き小文字]<Oa[#「a」は下付き小文字] ならば、pa[#「a」は下付き小文字] を減少せねばならぬ。私共はここにも有効供給及び有効需要の法則を認める。
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註一 需要曲線及び供給曲線のこの吟味を、利用曲線の逓減から演繹せられた二つの事実の説明によって補充するのが便利であろう。これらの二つの事実の一つは、一種の仮説として採られたもので(第四八節)、需要の曲線は常に逓減するということである。その二は、第一から演繹せられたもので、供給曲線は、価格の増加するに伴い、初めゼロから逓増し、次に逓減してゼロ(無限遠点において)に帰るということである(第四九節)。私は、これら二つの証明を、一般化して、任意数の商品の所有者間の任意数の交換の場合について行って、附録第一、価格決定の幾何学的理論、第一節、多数の商品間の交換について、のうちに述べておいた。
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第十章 稀少性すなわち交換価値の原因について
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要目 九九 二商品間の交換の解析的な定義。一〇〇 交換価値と稀少性との比例性。欲望曲線が不連続な場合に関する留保。一〇一 交換価値の原因としての稀少性。交換価値は相対的事実であり、稀少性は絶対的事実である。個人的稀少性しか存在しない。平均的稀少性。一〇二 二商品の相対的価格の変動。変動の四原因。これらの原因を証明する可能性。一〇三 均衡価格の変動の法則。
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九九 かくの如く、分析をおし詰めれば、利用曲線と所有量とが市場価格の成立すなわち均衡価格の成立に必要にしてかつ充分なる要素である。これらの要素から、まず部分的並びに全部需要曲線が数学的に出てくるが、その理由は、各人に自己の欲望の最大満足を得ようと努める事実があるからである。次に部分的及び全部需要曲線から、市場価格すなわち均衡価格が数学的に出てくるのであるが、その理由は、市場には唯一の価格すなわち全部有効需要と全部有効供給とを相等しからしめる価格しかあり得ない事実があるからである。換言すれば、各人は自ら与える所の物に比例して受けねばならないしまた受ける所の物に比例して与えねばならないという事実があるからである。
よって、自由競争の行われる市場において二商品の間に行われる交換は[#「自由競争の行われる市場において二商品の間に行われる交換は」に傍点]、二商品のいずれか一方のすべての所有者なりまたは双方のすべての所有者なりが[#「二商品のいずれか一方のすべての所有者なりまたは双方のすべての所有者なりが」に傍点]、共通にして同一の比率で[#「共通にして同一の比率で」に傍点]、売る所の商品を与え買う所の商品を受ける条件の下において[#「売る所の商品を与え買う所の商品を受ける条件の下において」に傍点]、各人の欲望の最大満足を得ることの出来る行動である[#「各人の欲望の最大満足を得ることの出来る行動である」に傍点]。
社会的富の理論の主な目的は、この命題を一般化し、これがまた、二商品間の交換と同様に、多数の商品間の交換にも相通ずるものであり、また交換におけると同じく、生産の自由競争の場合にも相通ずるものであることを明らかにするにある。社会的富の生産の理論の主な目的は、この命題から帰結を導き出し、農業工業及び商業の組織の法則がこの命題からいかにして出てくるかを示すにある。だから、この命題は純粋経済学、応用経済学のすべてを貫くものであると、いい得よう。
一〇〇 va[#「a」は下付き小文字], vb[#「b」は下付き小文字] は商品(A)及び(B)の交換価値であり、その比は均衡市場価格を示し、ra,1[#「a,1」は下付き小文字], rb,1[#「b,1」は下付き小文字], ra,2[#「a,2」は下付き小文字], rb,2[#「b,2」は下付き小文字], ra,3[#「a,3」は下付き小文字], rb,3[#「b,3」は下付き小文字] ……は交換者(1)、(2)、(3)……における交換後の稀少性すなわち充足せられた最終の欲望の強度であるから、最大満足の定理により、交換者(1)にとっては、
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[#式(fig45210_063.png)入る]
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であり、交換者(2)にとっては、
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[#式(fig45210_064.png)入る]
[#ここで字下げ終わり]
であり、交換者(3)にとっては、
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[#式(fig45210_065.png)入る]
[#ここで字下げ終わり]
である。……故に
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[#式(fig45210_066.png)入る]
[#ここで字下げ終わり]
である。これをまた次のように表わすことも出来る。
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va[#「a」は下付き小文字]:vb[#「b」は下付き小文字]
::ra,1[#「a,1」は下付き小文字]:rb,1[#「b,1」は下付き小文字]
::ra,2[#「a,2」は下付き小文字]:rb,2[#「b,2」は下付き小文字]
::ra,3[#「a,3」は下付き小文字]:rb,3[#「b,3」は下付き小文字]
:: …… ……
[#ここで字下げ終わり]
なお注意せねばならぬが、もし商品がある一定の単位で消費せられ、従って欲望曲線が不連続であれば、稀少性の表の中に既に知ったように(第八三節)、充された最後の欲望の強度と充されない最初の欲望の平均にほぼ近い比例項を特に目立つように記入せねばならぬ。
また、稀少性の比のうち一つまたは多くにおいて、比の二項中の一方が欠けることも可能である。例えば所有者(2)は、価格が pa[#「a」は下付き小文字] であるときは、(A)の需要者でないことがあり得よう。この場合にはこの人にとって(A)の稀少性はあり得ない。なぜなら ra,2[#「a,2」は下付き小文字] の項は、この所有者が感ずる(A)の最初の欲望の強度 αr,2[#「r,2」は下付き小文字] より大なる項 pa[#「a」は下付き小文字]rb,2[#「b,2」は下付き小文字] によって置き換えられねばならぬからである(第八六節)。また例えば所有者(3)が、pa[#「a」は下付き小文字] の価格においてはすべてを投じて(A)を需要する人である場合があり得る。すなわち(B)の所有量または存在の全量の供給者である場合があり得る。この場合には、この人にとっては、(B)の稀少性はない、充された欲望がないからである。項 rb,3[#「b,3」は下付き小文字] はこの所有者が感ずる(B)の最初の欲望の強度 βr,3[#「r,3」は下付き小文字] より大なる項 pb[#「b」は下付き小文字]ra,3[#「a,3」は下付き小文字] によって置き換えられねばならぬ(第八七節)。もっとも pa[#「a」は下付き小文字]rb,2[#「b,2」は下付き小文字], pb[#「b」は下付き小文字]ra,3[#「a,3」は下付き小文字] の項を括弧に入れて、上の表の中に記すことも出来よう。そのときは稀少性は充された[#「充された」に傍点]または充されねばならぬ[#「充されねばならぬ」に傍点]最後の欲望の強さと定義されねばならぬ。
これら二つの留保をすれば、私共は次の命題を立てることが出来る。
市場価格または均衡価格は稀少性の比に等しい[#「市場価格または均衡価格は稀少性の比に等しい」に傍点]。他の言葉でいえば、
交換価値は稀少性に比例する[#「交換価値は稀少性に比例する」に傍点]。
一〇一 二商品の間に行われる交換に関し、交換の数学的理論の研究の当初に、私は一つの目的を定めた(第四〇節)。それは、経済学及び社会経済学の目的と分け方を取扱った第一編でなしたように、稀少性から出発して交換価値に到らないで、交換価値から出発して稀少性に到ろうとすることであった。今私はここにこの目的を達した。実際、ここに見るような稀少性すなわち充された最後の欲望の強度は、先に私が利用と限られた量との二条件をもって定義した稀少性(第二一節)に全く相一致する。もしある物に欲望が無く、外延利用も強度利用もなく、換言すれば、この物が利用のない無益のものであるとしたら、充された最後の欲望というものはあり得ない。また物が利用曲線をもっていても、外延利用より大なる量において存在し、すなわち量において無限であるならば、充された最後の欲望の強度はあり得ない。だから、ここでいう稀少性は、先にいった稀少性に他ならない。そして、このことは、稀少性が評価し得られる大さと考えられ、また交換価値がそれに伴うのみでなく必然的にそれに比例することがあたかも重量が質量と比例する如くである場合にのみ、あり得るのである。ところで稀少性と交換価値とが、同時に存在し比例を保つ二つの現象であることがたしかだとしたら、たしかに稀少性は交換価値の原因である。
交換価値は重量のように相対的[#「相対的」に傍点]事実であり、稀少性は質量のように絶対的[#「絶対的」に傍点]事実である。二商品(A)、(B)があり、その一方が無利用となり、または利用があっても量において無限となれば、それはもはや稀少ではなく、交換価値をもたない。この場合には、他方の商品も交換価値をもたなくなる。しかしこの商品は稀少でなくなりはしない。所有者である人々の各々において種々の程度に稀少であり、それぞれ一定の稀少性をもつのである。
私はここに所有者である人々の各々においてといった。まことに、(A)商品または(B)商品の稀少性というような一般的なものはあり得ない。従って(A)の稀少性の(B)の稀少性に対する一般的比、または(B)の稀少性の(A)の稀少性に対する一般的比なるものも、もちろんあり得ない。(A)または(B)の所有者(1)、(2)、(3)……に対するこれら商品の多数の稀少性があり、これら所有者に対する(A)の稀少性の(B)の稀少性に対する多数の比があるのみである。稀少性[#「稀少性」に傍点]は個人的であり、主観的[#「主観的」に傍点]である。交換価値は現実的[#「現実的」に傍点]であり、客観的[#「客観的」に傍点]である。だから、稀少性、有効需要、所有量を速力、通過した空間、通過に要した時間に対比し、また速力をある空間を通過するに用いられた時間に対する通過距離の導函数と定義するように、稀少性をも、所有量に対する有効利用の導函数と定義し得るのは、それぞれの個々の人についてである。
もし(A)商品の稀少性一般または(B)商品の稀少性一般のようなものを考えよ
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