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要目 八五 価格零における需要。それは外延利用に等しい。八六 (A)の需要が零の場合の価格。八七 (B)の供給が所有量に等しい場合の価格。八八 供給が所有量に等しい条件、所有量の双曲線と需要曲線とが交わること。八九 双曲線は交点の間では需要曲線となる。九〇 所有量の減少。九一 増加。九二 一般の場合は二商品の所有者の場合である。部分的有効需要の二つの方程式または曲線。九三、九四、九五 各商品の需要方程式、または曲線は同じ商品の供給を価格の函数として表わす式または曲線でもある。九六 二商品間の交換の場合におけるせり上げの傾向を表わす方程式の一般体系。九七、九八 方程式の解法。
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 八五 部分的需要の方程式
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da[#「a」は下付き小文字]=fa,1[#「a,1」は下付き小文字](pa[#「a」は下付き小文字])
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は、
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φa,1[#「a,1」は下付き小文字](da[#「a」は下付き小文字])=pa[#「a」は下付き小文字]φb,1[#「b,1」は下付き小文字](qb[#「b」は下付き小文字]−da[#「a」は下付き小文字]pa[#「a」は下付き小文字])
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を da[#「a」は下付き小文字] に関して解いたと仮定した方程式に他ならないから、我々は、部分的需要の方程式を、この後の形において論究することが出来る。
 まず、pa[#「a」は下付き小文字][#「pa」は底本では「ra」]=0 とすれば、この方程式は
φa,1[#「a,1」は下付き小文字](da[#「a」は下付き小文字])=0
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となり、その根は da[#「a」は下付き小文字]=αq,1[#「q,1」は下付き小文字]=Oad,1[#「d,1」は下付き小文字][#「d,1」は底本では「a,1」] となる。
 よって、二商品が市場に与えられ[#「二商品が市場に与えられ」に傍点]、それらの一方の価格[#「それらの一方の価格」に傍点](他方で表わした[#「他方で表わした」に傍点])がゼロであるときは[#「がゼロであるときは」に傍点]、他方の商品の各所有者によって需要せられるこの商品の量は[#「他方の商品の各所有者によって需要せられるこの商品の量は」に傍点]、これらの人々が欲するままに自分の全欲望を充足するに必要な量すなわち外延利用に等しい[#「これらの人々が欲するままに自分の全欲望を充足するに必要な量すなわち外延利用に等しい」に傍点]。
 これがそうでなければならぬことは、第七一節の説明によってもまた明らかである。曲線 ad,1[#「d,1」は下付き小文字]ap,1[#「p,1」は下付き小文字] は点 αq,1[#「q,1」は下付き小文字] から出発するからである。
 八六 次に、需要の方程式において、da[#「a」は下付き小文字]=0 であるとすれば、需要の方程式は
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φa,1[#「a,1」は下付き小文字](0)=pa[#「a」は下付き小文字]φb,1[#「b,1」は下付き小文字](qb[#「b」は下付き小文字])
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となり、その根は [#式(fig45210_049.png)入る]
となる。
 よって、二商品の一方の所有者によって需要せられる他商品の量は[#「二商品の一方の所有者によって需要せられる他商品の量は」に傍点]、この他商品の価格が[#「この他商品の価格が」に傍点]、この他商品に対する欲望の最大なものの強度と供給すべき商品の保留せられるべき量によって充され得る最後の欲望強度との比に等しければ[#「この他商品に対する欲望の最大なものの強度と供給すべき商品の保留せられるべき量によって充され得る最後の欲望強度との比に等しければ」に傍点]、またはこの比より大であれば[#「またはこの比より大であれば」に傍点]、ゼロである[#「ゼロである」に傍点]。
 これは、もちろん、そうでなければならぬ。なぜなら、この場合には、(B)の所有者(1)によって消費せられる(B)の最後の部分例えば[#式(fig45210_039.png)入る]によって、この所有者は[#式(fig45210_050.png)入る]の満足を得られるのに反し、この最後の部分を価格 pa[#「a」は下付き小文字] で(A)の[#式(fig45210_040.png)入る]量と交換すれば、前の場合に等しいかまたはより小なる満足
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[#式(fig45210_051.png)入る]
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しか得られないからである。
 八七 (B)の所有者(1)が(A)を需要しないために必要な価格の条件を知った私共は、更に(B)を保留しないために必要な価格の条件を研究しよう。それには、方程式
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[1] φa,1[#「a,1」は下付き小文字](da[#「a」は下付き小文字])=pa[#「a」は下付き小文字]φb,1[#「b,1」は下付き小文字](qb[#「b」は下付き小文字]−da[#「a」は下付き小文字]pa[#「a」は下付き小文字])
[#ここで字下げ終わり]
において、
[#ここから2字下げ]
[2] da[#「a」は下付き小文字]pa[#「a」は下付き小文字]=qb[#「b」は下付き小文字]
[#ここで字下げ終わり]
とおかねばならぬ。しかるときは、
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[3] φa,1[#「a,1」は下付き小文字](da[#「a」は下付き小文字])=pa[#「a」は下付き小文字]φb,1[#「b,1」は下付き小文字](0)
[#ここで字下げ終わり]
となり、その根は
[#ここから4字下げ]
[#式(fig45210_052.png)入る]
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である。
 よって、二商品のうち一商品の所有者によって供給せられるその商品の量は[#「二商品のうち一商品の所有者によって供給せられるその商品の量は」に傍点]、需要せられるべき商品の価格が[#「需要せられるべき商品の価格が」に傍点]、この後の商品により充されるべき最後の欲望の強度と供給すべき商品の欲望の最大強度との比に等しいかまたはこれより小なるとき[#「この後の商品により充されるべき最後の欲望の強度と供給すべき商品の欲望の最大強度との比に等しいかまたはこれより小なるとき」に傍点]、所有せられる量に等しい[#「所有せられる量に等しい」に傍点]。
 これも、また、そうでなければならぬ。けだし、この場合には(B)の所有者(1)によって消費せられる(B)の最初の部分例えば[#式(fig45210_039.png)入る]により、この所有者は[#式(fig45210_053.png)入る]だけの満足しか得られないが、これを価格 pa[#「a」は下付き小文字] で(A)の[#式(fig45210_040.png)入る]と交換すれば、同じ[#式(fig45210_039.png)入る]によって、前の場合と等しいまたはより大なる満足
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[#式(fig45210_054.png)入る]
[#ここで字下げ終わり]
が得られるからである。
 八八 方程式[2]、[3]の各辺を互に相乗じ、pa[#「a」は下付き小文字] を消去するため、それを pa[#「a」は下付き小文字] で除せば、
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da[#「a」は下付き小文字]φa,1[#「a,1」は下付き小文字](da[#「a」は下付き小文字])=qb[#「b」は下付き小文字]φb,1[#「b,1」は下付き小文字](0)
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となる。qb[#「b」は下付き小文字] と φb,1[#「b,1」は下付き小文字](0)=βr,1[#「r,1」は下付き小文字] とを、これらを表わす長さ Oqb[#「b」は下付き小文字],Oβr,1[#「r,1」は下付き小文字] で置き換えれば、
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da[#「a」は下付き小文字]φa,1[#「a,1」は下付き小文字](da[#「a」は下付き小文字])=Oqb[#「b」は下付き小文字]×Oβr,1[#「r,1」は下付き小文字]
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となる。
 この方程式は、次の言葉でいい表わし得る条件をもっている方程式である。――二商品のうちの一商品の供給がこの商品の所有量に等しいためには[#「二商品のうちの一商品の供給がこの商品の所有量に等しいためには」に傍点]、需要せられる商品の欲望曲線のうちに[#「需要せられる商品の欲望曲線のうちに」に傍点]、供給すべき商品の所有量を高さとし[#「供給すべき商品の所有量を高さとし」に傍点]、この商品の満足の最大強度を底辺として作られた矩形の面積に等しい矩形を作り得なければならぬ[#「この商品の満足の最大強度を底辺として作られた矩形の面積に等しい矩形を作り得なければならぬ」に傍点]。
 ところで、この条件は常に必ずしも満足せられるものではない。私の例にあっては、特にそうである。右の条件は、また、この条件すなわち(B)の所有量の双曲線 da[#「a」は下付き小文字]pa[#「a」は下付き小文字]=qb[#「b」は下付き小文字] と(A)の部分的需要曲線 da[#「a」は下付き小文字]=fa,1[#「a,1」は下付き小文字](pa[#「a」は下付き小文字]) とは相交わることを要するとの条件によって表わし得る。けだし、方程式[1]と[2]との二つを満足するには、右の二曲線が交わらねばならないからである。だがこれらの曲線は常に必ずしも交わらない。特に、私の例における所有者の場合には、交わらない。
 八九 この観察はまた他の重要な結果を齎《もた》らす。今、条件の方程式が充されたとし、かつ需要曲線が所有量の双曲線と点 q'b[#「b」は下付き小文字] 及び q''b[#「b」は下付き小文字][#底本では「b」は「a」](第一図)において交わると想像してみる。(B)の供給は、点 q'b[#「b」は下付き小文字] 及び q''b[#「b」は下付き小文字] の横坐標によって示される価格において、所有量 qb[#「b」は下付き小文字] に等しい。このことは、これらの価格の中間の価格においても、同様である。のみならず、方程式の組合せまたは曲線の組合せによると、中間の価格においては、(B)の供給は所有量 qb[#「b」は下付き小文字] より大であるべきであるように見える。しかし所有者は自ら所有する以上の量を供給することが不可能であるから、qb[#「b」は下付き小文字]−da[#「a」は下付き小文字]pa[#「a」は下付き小文字] は負の量であり得ないという制限を、導き入れねばならぬのはもちろんである。この条件は次のように表わされる。――二商品中の一商品の供給が所有量と等しくあり得るためには[#「二商品中の一商品の供給が所有量と等しくあり得るためには」に傍点]、この所有量の双曲線と他方の商品の需要曲線とが交わらねばならぬ[#「この所有量の双曲線と他方の商品の需要曲線とが交わらねばならぬ」に傍点]。量の双曲線は[#「量の双曲線は」に傍点]、右の交点の間にあっては[#「右の交点の間にあっては」に傍点]、需要曲線となる[#「需要曲線となる」に傍点]。
 九〇 もし、曲線 αr,1[#「r,1」は下付き小文字]αq,1[#「q,1」は下付き小文字] 及び βr,1[#「r,1」は下付き小文字]βq,1[#「q,1」は下付き小文字](第三図)が変化しないで、qb[#「b」は下付き小文字] が減少すれば、ρb[#「b」は下付き小文字] は増加し、従って[#式(fig45210_055.png)入る]は減少する。qb[#「b」は下付き小文字]=0 となるときは、ρb[#「b」は下付き小文字]=βr,1[#「r,1」は下付き小文字] であって、比[#式(f
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