作る角のうちに含まれる曲線の部分、しかもこの角のうちでも、点 Ad[#「d」は下付き小文字] と Ap[#「p」は下付き小文字] との間に含まれた曲線の部分と、点 Bd[#「d」は下付き小文字] と Bp[#「p」は下付き小文字] との間に含まれた曲線の部分とを考察すればよいのであった。もちろんこのことは交換という事実の性質上当然に出てくる。この仮定においては、曲線 KLM, NPQ は連続曲線であり、それらのそれぞれの坐標によって作られる矩形の面積は、ただ一つの極大を示すに過ぎない。だがかく限定せられた場合においても吟味せられるべき興味ある問題がある。
六四 私の推論中では、一方 Ad[#「d」は下付き小文字]Ap[#「p」は下付き小文字] 及び KLM、他方 Bd[#「d」は下付き小文字]Bp[#「p」は下付き小文字] 及び NPQ は、それぞれ唯一点A及びBにおいてしか交わらないと考えられた。けれどもまずこれらの曲線はどこでも交わらない場合もあり得ることを注意すべきである。まことに、もし曲線 Bd[#「d」は下付き小文字]Bp[#「p」は下付き小文字] がN点の手前に位する点において価格の軸に達するとすれば、それは曲線 NPQ とは交わらない。かつこの場合には曲線 KLM は Ap[#「p」は下付き小文字] 点よりも遠い点において価格の軸を去り、曲線 Ad[#「d」は下付き小文字]Ap[#「p」は下付き小文字] には交わらない。従って問題はこの場合には解けない。
このことは驚くに足らない。この場合は、(B)のいずれの所有者も(A)の1に対して(B)の Ap[#「p」は下付き小文字] を、すなわち(A)の[#式(fig45210_029.png)入る]に対し(B)の1を、与えることを欲しない場合であり、他面からいえば、(A)のいずれの所有者も(B)の1に対し、(A)の[#式(fig45210_029.png)入る]を、すなわち(B)の Ap[#「p」は下付き小文字] に対し(A)の1を、与えようと欲しない場合である。この場合のせり上げが、市場に対し何らの影響を生ぜしめ得ないのは明らかである。(B)で表わした(A)の価格として Ap[#「p」は下付き小文字] 以下の価格すなわち(A)で表わした(B)の価格として[#式(fig45210_029.png)入る]以上の価格を成立せしめれば、(A)の需要者すなわち(B)の供給者はあるであろうが、(B)の需要者すなわち(A)の供給者はないであろう。そしてまたもし(A)で表わした(B)の価格として[#式(fig45210_029.png)入る]以下の価格を作れば、すなわち(B)で表わした(A)の価格として Ap[#「p」は下付き小文字] より以上の価格を成立せしめれば、(B)の需要者すなわち(A)の供給者はあるであろうが、(A)の需要者すなわち(B)の供給者はないであろう。
六五 次に、曲線の形状を注意して観察すれば、二曲線の間に多数の交点がある場合があり得ることが解る。まことにもし二商品(A)、(B)について、(B)をもってする(A)の需要が曲線 Ad[#「d」は下付き小文字]Ap[#「p」は下付き小文字] を示し、(A)をもってする(B)の需要が曲線 Bd[#「d」は下付き小文字]'Bp[#「p」は下付き小文字]' を示すとすれば、この曲線 Bd[#「d」は下付き小文字]'Bp[#「p」は下付き小文字]' は曲線 NPQ と三つの点 B, B', B'' において交わるであろう。この場合には、(B)と交換せられる(A)の供給曲線 KLM は、曲線 K'L'M' となるのであって、これは三つの点 A, A', A'' において曲線 Ad[#「d」は下付き小文字]Ap[#「p」は下付き小文字] に交わるであろう。A, A', A'' はそれぞれ B, B', B'' 点に対応する。この場合には二商品(A)、(B)の相互の交換の問題に三つの解があり得る。なぜなら曲線 Ad[#「d」は下付き小文字]Ap[#「p」は下付き小文字], Bd[#「d」は下付き小文字]'B'p[#「p」は下付き小文字] に包まれて互に逆数である底辺をもちかつ高さが互に他方の面積に等しい二つの矩形の三組があり得るからである。だがこれら三つの解は、いずれも同一の価値をもつものであろうか。
六六 三つの組のうち、まず、点 A' と B' の組、及び点 A'' と点 B'' の組を検討すれば、それらは、ただ一つの解しかあり得ない場合における点A及びBの組と同様の状態にあることが解る(第六〇節)。曲線 Ad[#「d」は下付き小文字]Ap[#「p」は下付き小文字] は A' 点すなわち二曲線 Ad[#「d」は下付き小文字]Ap[#「p」は下付き小文字],K'L'M'[#「'」は底本では下付き] の交点の右方であるかまたは左方であるかにより、曲線 K'L'M' より小であるかまたは大である。同様に曲線 B'd[#「d」は下付き小文字]B'p[#「p」は下付き小文字] は、B' 点すなわち二曲線 B'd[#「d」は下付き小文字]B'p[#「p」は下付き小文字] と NPQ とが交わる点の右方であるかまたは左方であるかにより、曲線 NPQ より小であるかまたは大である。また曲線 Ad[#「d」は下付き小文字]Ap[#「p」は下付き小文字] は、 A'' 点の右方であるかまたは左方であるかにより曲線 K'L'M' より小であるかまたは大である。同様にまた曲線 B'd[#「d」は下付き小文字]B'p[#「p」は下付き小文字] は、B'' 点の右方であるかまたは左方であるかにより、曲線 NPQ[#「NPQ」は底本では「NRQ」] より小であるかまたは大である。
これら二つの場合にあっては、均衡点の彼方において、商品の供給はその需要を超え、価格の下落すなわち均衡点への復帰を生ずる。また均衡点の此方において、商品の需要はその供給を超え、価格の騰貴すなわち均衡点への前進が生ずる。だからこの均衡を、私共は、垂直線上にある重心の上方に懸吊《けんちょう》点を有する物体が、垂線上から離れるとき、重力によって自ら均衡点に落ち付く所の均衡に、比べることが出来る。この均衡は安定均衡[#「安定均衡」に傍点](〔e'quilibre stable〕)である。
六七 点 A, B は同様ではない。A点の右においては曲線 Ad[#「d」は下付き小文字]Ap[#「p」は下付き小文字] は曲線 K'L'M' より大であり、左においては小である。同様にB点の右においては、曲線 B'd[#「d」は下付き小文字]B'p[#「p」は下付き小文字] は曲線 NPQ より大であり、左においてはより小である。だからこの場合には、均衡点の彼方《あちら》において、商品の需要はその供給より大であって、これは価格の騰貴を生ぜしめる。換言すれば、均衡点を離れしめる。そしてこの場合にもまた均衡点の此方《こちら》においては、商品の供給はその需要より大であり、これは価格の下落を生ぜしめる。すなわち均衡点を離れしめる。故にこの均衡は、支点が縦線上の重心より下にある物体の均衡に比すべきもので、もし重心が縦線を離れるとすると、ますますこれを遠ざかり、これを支点の下に置くのでなければ、自ら重力によっては復帰をしない。これは不安定均衡[#「不安定均衡」に傍点](〔e'quilibre instable〕)である。
六八 故に実のところ、A', B' の組と A'', B'' の組とがこの問題の二つの解法を成すものであり、A, B の組は、これら二つの解法の各々のそれぞれの領域の分岐点と極限とを示すに過ぎない。pb[#「b」は下付き小文字]=μの彼方では、(A)で表わした(B)の価格は、均衡価格 p''b[#「b」は下付き小文字] すなわち B'' 点の横坐標に近づいていく。その此方では、価格 p'b[#「b」は下付き小文字] すなわち B' 点の横坐標に近づいていく。これと相関的に、[#式(fig45210_030.png)入る]の此方においては、(B)で表わした(A)の価格は、均衡価格 p''a[#「a」は下付き小文字] すなわち A'' の横坐標に近づいていく。この彼方においては、それは、価格 p'a[#「a」は下付き小文字] すなわち A' 点の横坐標に近づいていく。
容易に認め得るように、この事実は、商品の性質により、(B)で表わした(A)の価格が小さいとき需要せられる大なる量の(A)が、(A)で表わした(B)の価格が大なるとき需要せられる小なる量の(B)に等価であり得ると同時に、また(B)で表わした(A)の価格が大なるとき需要せられる小なる量の(A)が、(A)で表わした(B)の価格が小なるとき需要せられる大なる量の(B)に等価となり得る場合に現われる。そこでせりが、(B)で表わした(A)の価格の小なるものと、(A)で表わした(B)の価格の大なるものとをもって始まるか、または(A)で表わした(B)の価格の小なるものと、(B)で表わした(A)の価格の大なるものとをもって始まるかに従い、これら二つの均衡の第一に終るかまたは第二に終ることとなるのである。多数の商品が価値尺度財または貨幣の仲介により互に交換せられる場合にも、なおこの事実が可能であるか否か。私は後にこれを考察しよう。
六九 以上の研究にあっては、需要曲線 Ad[#「d」は下付き小文字]Ap[#「p」は下付き小文字], Bd[#「d」は下付き小文字]Bp[#「p」は下付き小文字], B'd[#「d」は下付き小文字]Bp[#「p」は下付き小文字]' は二つの坐標軸を切ると仮定せられている。けれども需要曲線が存在量の双曲線と一致し、これらの坐標軸に漸近線をなす極端な場合をも研究せねばならぬ。
例えば Ad[#「d」は下付き小文字]Ap[#「p」は下付き小文字] が双曲線 Da[#「a」は下付き小文字]pa[#「a」は下付き小文字]=Qb[#「b」は下付き小文字] と一致し、(B)はあらゆる価格においてすべて供給せられるとすると、方程式〔1〕は、
[#ここから4字下げ]
[#式(fig45210_031.png)入る]
[#ここで字下げ終わり]
となる。これは点 Qb[#「b」は下付き小文字] を通る曲線と曲線 KLM とが交点 πa[#「a」は下付き小文字] において交わることを示す。ただし
[#ここから4字下げ]
[#式(fig45210_032.png)入る] すなわち pa[#「a」は下付き小文字]=∞
[#ここで字下げ終わり]
なる場合の解を考慮外に置く。
そして、方程式〔2〕は、
[#ここから4字下げ]
Qb[#「b」は下付き小文字]=Fb[#「b」は下付き小文字](pb[#「b」は下付き小文字])
[#ここで字下げ終わり]
となる。これは、曲線 Bd[#「d」は下付き小文字]Bp[#「p」は下付き小文字] と、ON'=Qb[#「b」は下付き小文字] の距離を保って価格の軸に平行に引いた直線 N'P'Q' との交点が πb[#「b」は下付き小文字] にあることを示す。
七〇 最後に、もし二商品がすべての価格で供給せられるとすれば、同時に
[#ここから4字下げ]
[#式(fig45210_033.png)入る]
[#ここで字下げ終わり]
となるべく、これらは pa[#「a」は下付き小文字],pb[#「b」は下付き小文字] を次のような値とならしめるであろう。
[#ここから4字下げ]
[#式(fig45210_034.png)入る]
[#ここで字下げ終わり]
だから、この最後の場合には、二商品は純粋に単純に存在量に反比例して交換せられる。すなわち次の方程式に従って交換せられる。
[#ここから4字下げ]
Qa[#「a」は下付き小文字]va[#「a」は下付き小文字]=Qb[#「b」は下付き小文字]vb[#「b」は下付き小文字]
[#ここで字下げ終わり]
そして容易に認め得られるよう
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