v曲線の坐標によって作られる矩形の面積は、価格 pa[#「a」は下付き小文字] の函数としての(B)の供給を示しているのに反し、(B)の供給曲線の縦坐標の長さは、価格 pb[#「b」は下付き小文字] の函数としての(B)の供給を示している。
この曲線は、(A)で表わした(B)の価格が無限大であるときすなわち(B)で表わした(A)の価格が無限小であるとき、零の値から出発し、従って価格の軸に漸近線をなす。そしてそれは、原点に近づくに従い、すなわち(A)で表わした(B)の価格が減少するに従い、すなわち(B)で表わした(A)の価格が増大するに従い、上向し、ついに最高点Pに達する。この点の横坐標は、曲線 Ad[#「d」は下付き小文字]Ap[#「p」は下付き小文字] に包まれた矩形の面積を最大ならしめる Am[#「m」は下付き小文字] 点の横坐標 Opa,m[#「a,m」は下付き小文字] によって表わされる pa,m[#「a,m」は下付き小文字] の逆数すなわち(B)で表わした(A)の価格を示す。次にこの曲線は、原点に近づくに従い、高さを減じ、ついに零となる。これが零となる点は、曲線 Ad[#「d」は下付き小文字]Ap[#「p」は下付き小文字] が価格の軸を切る Ap[#「p」は下付き小文字] 点の横坐標 OAp[#「p」は下付き小文字] によって表わされる(B)で表わした(A)の価格の逆数においてである。すなわち ON によって示される(A)で表わした(B)の価格においてである。
いうまでもなく、曲線 KLM, NPQ の形状は全く曲線 Bd[#「d」は下付き小文字]Bp[#「p」は下付き小文字], Ad[#「d」は下付き小文字]Ap[#「p」は下付き小文字] の形状|如何《いかん》による。Bd[#「d」は下付き小文字]Bp[#「p」は下付き小文字], Ad[#「d」は下付き小文字]Ap[#「p」は下付き小文字] が図に示されたものとは異っているとすれば、KLM, NPQ もまた全く異ったものとなるであろう。それはとにかく、今私共に与えられた条件においては、曲線 Bd[#「d」は下付き小文字]Bp[#「p」は下付き小文字] は最大矩形点 Bm[#「m」は下付き小文字] を過ぎた後、下向して、点線 NPQ に交わるのであるが、この交点は、NPQ が零から最高点Pに向って上向しつつある所にある。従って、曲線 Ad[#「d」は下付き小文字]Ap[#「p」は下付き小文字] もまた、下向するとき、最大矩形点 Am[#「m」は下付き小文字] を通る以前に点線 KLM に交わるのであるが、この交点は、この曲線がその最高点Lから零に下向する所にある。
六〇 だから、もしA点において二曲線 Ad[#「d」は下付き小文字]Ap[#「p」は下付き小文字], KLM が交わるとしたら、この点の右においては曲線 Ad[#「d」は下付き小文字]Ap[#「p」は下付き小文字] は曲線 KLM より小であり、左においてはより大であることも明らかである。またB点において二曲線 Bd[#「d」は下付き小文字]Bp[#「p」は下付き小文字], NPQ が交わるとすれば、この点の右においては、曲線 Bd[#「d」は下付き小文字]Bp[#「p」は下付き小文字] は曲線 NPQ より小であり、左においてはより大であることも明らかである。
ところで、価格[#式(fig45210_025.png)入る]は、仮定によって、Da[#「a」は下付き小文字]=Oa[#「a」は下付き小文字], Db[#「b」は下付き小文字]=Ob[#「b」は下付き小文字] ならしめる価格であるから、pa[#「a」は下付き小文字] より大なるすべての(B)で表わした(A)の価格においては、すなわち pb[#「b」は下付き小文字] より小なるすべての(A)で表わした(B)の価格においては、Oa[#「a」は下付き小文字]>Da[#「a」は下付き小文字] であり、Db[#「b」は下付き小文字]>Ob[#「b」は下付き小文字] である。反対に pa[#「a」は下付き小文字] より小なるすべての(B)で表わした(A)の価格においては、すなわち pb[#「b」は下付き小文字] より大なる(A)で表わした(B)の価格にあっては、Da[#「a」は下付き小文字]>Oa[#「a」は下付き小文字] であり、同時に Ob[#「b」は下付き小文字]>Db[#「b」は下付き小文字] である。前の場合には pb[#「b」は下付き小文字] の高騰すなわち pa[#「a」は下付き小文字] の下降によってしか、均衡価格が現われ得ないし、後の場合には pa[#「a」は下付き小文字] の高騰すなわち pb[#「b」は下付き小文字] の下落によってしか、均衡価格は現われ得ない。
そこで、二商品相互の間の交換における有効需要供給の法則[#「有効需要供給の法則」に傍点](loi de l'offre et de la demande effectives)すなわち均衡価格成立の法則[#「均衡価格成立の法則」に傍点](〔loi d'e'stablissement d'e'quilibre〕)を、次のように表現することが出来る。――二商品が与えられ[#「二商品が与えられ」に傍点]、それらについて市場の均衡すなわちそれぞれ一方の商品で表わした他方の価格の静止状態があり得るためには[#「それらについて市場の均衡すなわちそれぞれ一方の商品で表わした他方の価格の静止状態があり得るためには」に傍点]、二商品の各々の有効需要がその有効供給に等しいことを必要とし[#「二商品の各々の有効需要がその有効供給に等しいことを必要とし」に傍点]、またこれだけの条件が充されるだけで充分である[#「またこれだけの条件が充されるだけで充分である」に傍点]。この均等が存在しないとすると[#「この均等が存在しないとすると」に傍点]、均衡価格に達するためには[#「均衡価格に達するためには」に傍点]、有効需要が有効供給より大なる商品の価格が高騰せねばならぬし[#「有効需要が有効供給より大なる商品の価格が高騰せねばならぬし」に傍点]、有効供給が有効需要より大なる商品が下落せねばならぬ[#「有効供給が有効需要より大なる商品が下落せねばならぬ」に傍点]。
この法則は、先に取引所の市場の研究のすぐ後で表明しようと試みたものであるが(第四二節)、しかしその厳密な証明が必要であった(第四八節)。
六一 我々は今や、市場における競争の機構がいかなるものであるかを、よく理解し了《お》えた。実際においても交換の問題は、価格の高騰及び下落によって解かれている。私がここに示したのは、この問題の数学的、純理論的解法である。私の目的が、実際の解き方に、私の解法を置き換えようとするにあるのではないのは、いうまでもない。実際の解き方は、理想通りに、迅速であり、正確である。例えば大市場では、仲買人やせり売人がなくても、その時々の均衡価格は数分の間に決定し、三四十分の間に巨額の商品が取引せられる。これに反し、理論的解法は、ほとんどすべての場合に、行われ難いものである。それ故に、交換の曲線を画《えが》きまたはその方程式を作ることは困難であるというのは、根拠のない批難を私共に加えようとする者である。ある商品の需要または供給曲線の全部または一部を作って、ある場合に利益が得られるか否か、これらの曲線をを作ることが可能であるか否か、それらはここに問おうとすることではない。今はただ交換の一般的問題を研究するのであって、我々にとっては、交換曲線の純粋な抽象的な概念が得られれば充分なのであり、同時にその把握が欠くべからざるものなのである。
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第七章 二商品相互の間に行われる交換の問題の解法の吟味
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要目 六二、六三 供給曲線が唯一の極大において連続である場合に論議を局限する。六四 供給曲線は需要曲線と交わらないこともあり得る。この場合価格は成立しない。六五 供給曲線は需要曲線と三点において交わることもあり得る。この場合三つの価格があり得る。六六、六七、六八 この内二つの均衡価格は安定であり、一つの均衡価格は不安定である。六九 二つの需要曲線の内一つが存在量の双曲線と一致する場合。七〇 二つ共一致する場合。
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六二 以上述べてきた所を要約すれば、二商品(A)、(B)が与えられ、その有効需要と価格との関係が、方程式
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Da[#「a」は下付き小文字]=Fa[#「a」は下付き小文字](pa[#「a」は下付き小文字]), Db[#「b」は下付き小文字]=Fb[#「b」は下付き小文字](pb[#「b」は下付き小文字])
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によって表わされるとすると、均衡価格は方程式
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Da[#「a」は下付き小文字]va[#「a」は下付き小文字]=Db[#「b」は下付き小文字]vb[#「b」は下付き小文字]
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によって得られる。そして Da[#「a」は下付き小文字], Db[#「b」は下付き小文字] にその値を代入すれば、均衡価格は方程式
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Fa[#「a」は下付き小文字](pa[#「a」は下付き小文字])va[#「a」は下付き小文字]=Fb[#「b」は下付き小文字](pb[#「b」は下付き小文字])vb[#「b」は下付き小文字]
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によって得られる。だがしかし、pa[#「a」は下付き小文字] を求めようとするならば、更に右の方程式を次の[1]の形とすることも出来、また pb[#「b」は下付き小文字] を求めようとするならば、それを[2]の形とすることも出来る。
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[#式(fig45210_026.png)入る]
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前者は Da[#「a」は下付き小文字]=Oa[#「a」は下付き小文字] を表わし、後者は Ob[#「b」は下付き小文字]=Db[#「b」は下付き小文字] を表わす。
私は、これら二つの形の方程式を、曲線
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[#式(fig45210_027.png)入る]
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の交点により、または曲線
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[#式(fig45210_028.png)入る]
[#ここで字下げ終わり]
の交点によって解いた(第五九節)。今この解法を吟味しようと思う。
六三 けれども今は、可能なあらゆる場合についてこの解法を吟味するのではない。あらゆる場合についてこの解法を吟味するのは、多大の時を要し、またここはその機会ではない。ただ示した図に関するような極めて簡単な一般的場合のみを吟味する。第二図においては、私は、曲線 Ad[#「d」は下付き小文字]Ap[#「p」は下付き小文字], Bd[#「d」は下付き小文字]Bp[#「p」は下付き小文字] が連続であると考え、かつまた
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Da[#「a」は下付き小文字]=OAd[#「d」は下付き小文字], pa[#「a」は下付き小文字]=0 なる点と
pa[#「a」は下付き小文字]=OAp[#「p」は下付き小文字], Da[#「a」は下付き小文字]=0 なる点との間に、及び
Db[#「b」は下付き小文字]=OBd[#「d」は下付き小文字], pb[#「b」は下付き小文字]=0 なる点と
[#ここで字下げ終わり]
pb[#「b」は下付き小文字]=OBp[#「p」は下付き小文字], Db[#「b」は下付き小文字]=0 なる点との間に、これら曲線上のそれぞれの坐標によって作られる矩形 Da[#「a」は下付き小文字]pa[#「a」は下付き小文字], Db[#「b」は下付き小文字]pb[#「b」は下付き小文字] がもち得る極大はそれぞれただ一つであると考えておいた。のみならず第二図については、正の坐標が
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