アれを知り得るであろうことも確実であり、また pa[#「a」は下付き小文字] の値が一度知られるならば、彼は直ちに da[#「a」は下付き小文字] の値を定めることが出来、右の方程式により、y の値が直ちに決定することも確実である。
qb[#「b」は下付き小文字] の所有者が自ら市場に現われる場合には、せり上げの傾向を有効ならしめないで、可能的ならしめることが出来る。他の言葉でいえば、価格 pa[#「a」は下付き小文字] が決定した後に至って初めて、需要 da[#「a」は下付き小文字] を決定することが出来る。しかしその場合にもせり上げの傾向はもちろん働く。またもし例えば彼が自ら市場に現われることが出来ず、ある理由により、ある友人または仲買人に指図を与えるとすれば、彼は pa[#「a」は下付き小文字] の可能な値を零から無限大まで予想し、それらに相応する da[#「a」は下付き小文字] のすべての値を決定し、これを何らかの方法で表現しておかねばならぬ。ところで、計算に少しく馴れた人々は右の事実の数学的表現をなすのに二つの方法があるのを知っているであろう。
[#図(fig45210_017.png)入る]
五一 第一図において、横軸 Op を価格を示す軸とし、縦軸 Od を需要を示す軸とする。原点Oから横軸上にとられた長さ Opa[#「a」は下付き小文字]', Opa[#「a」は下付き小文字]'' ……は、(B)で表わした(A)の価格、例えば小麦で表わした燕麦の可能な種々の価格を示すものとする。同じ原点Oから縦軸にとった長さ Oad,1[#「d,1」は下付き小文字] は、価格が0のとき、小麦または(B)の所有者が需要する燕麦または(A)の量を示すものとする。点 p'a[#「a」は下付き小文字], p''a[#「a」は下付き小文字] ……を通って需要軸に平行線を引いて、これらの平行線の上にこれらの点 p'a[#「a」は下付き小文字], p''a[#「a」は下付き小文字] ……からとった長さ p'a[#「a」は下付き小文字]a'1[#「1」は下付き小文字], p''a[#「a」は下付き小文字]a''1[#「1」は下付き小文字] は、それぞれ p'a[#「a」は下付き小文字], p''a[#「a」は下付き小文字] の価格で需要せられる燕麦または(A)の量を示す。長さ Oap,1[#「p,1」は下付き小文字] は小麦または(B)の所有者が燕麦または(A)をもはや需要しないであろう価格を示す。
そうとすれば、(B)の所有者(1)のせり上げる傾向は、幾何学的には、点 ad,1[#「d,1」は下付き小文字], a'1[#「1」は下付き小文字], a''1[#「1」は下付き小文字] … ap,1[#「p,1」は下付き小文字] によって作られる曲線 ad,1[#「d,1」は下付き小文字] ap,1[#「p,1」は下付き小文字] により、代数的には、この曲線の方程式
[#ここから4字下げ]
da[#「a」は下付き小文字]=fa,1[#「a,1」は下付き小文字](pa[#「a」は下付き小文字])
[#ここで字下げ終わり]
によって表わされる。曲線 ad,1[#「d,1」は下付き小文字]ap,1[#「p,1」は下付き小文字] と方程式 da[#「a」は下付き小文字]=fa,1[#「a,1」は下付き小文字](pa[#「a」は下付き小文字]) とは経験によって得られる。同様にして、(B)のすべての所有者(2)、(3)……のせり上げの傾向を、幾何学的には曲線 ad,2[#「d,2」は下付き小文字]ap,2[#「p,2」は下付き小文字], ad,3[#「d,3」は下付き小文字]ap,3[#「p,3」は下付き小文字] ……により、代数的には、
[#ここから4字下げ]
da[#「a」は下付き小文字]=fa,2[#「a,2」は下付き小文字](pa[#「a」は下付き小文字]),da[#「a」は下付き小文字]=fa,3[#「a,3」は下付き小文字](p[#「p」は底本では「d」]a[#「a」は下付き小文字]) ……
[#ここで字下げ終わり]
によって表わすことが出来る。
[#図(fig45210_018.png)入る]
五二 さて、同じ横坐標の上にあるすべての縦坐標を加えて、いわばこれらの部分的曲線(courbes partielles)ad,1[#「d,1」は下付き小文字]ap,1[#「p,1」は下付き小文字], ad,2[#「d,2」は下付き小文字]ap,2[#「p,2」は下付き小文字], ad,3[#「d,3」は下付き小文字][#「d,3」は底本では「d3」]ap,3[#「p,3」は下付き小文字][#「p,3」は底本では「p3」] …を合計すれば、すなわち同一の横坐標におけるすべての縦坐標を加えれば、(B)のすべての所有者のせり上げの傾向を幾何学的に示す全部曲線 Ad[#「d」は下付き小文字]Ap[#「p」は下付き小文字](第二図)が得られる。同様にすべての部分的方程式を加えれば、同じせり上げの傾向を代数的に示す全部方程式
[#ここから4字下げ]
Da[#「a」は下付き小文字]=fa,1[#「a,1」は下付き小文字](pa[#「a」は下付き小文字])+fa,2[#「a,2」は下付き小文字](pa[#「a」は下付き小文字])+fa,3[#「a,3」は下付き小文字](pa[#「a」は下付き小文字])+ … =Fa[#「a」は下付き小文字](pa[#「a」は下付き小文字])
[#ここで字下げ終わり]
が得られる。これらは、(B)で表わした(A)の価格の函数としての(A)の((B)を反対給付とする)需要曲線[#「需要曲線」に傍点](courbe de demande)または需要方程式[#「需要方程式」に傍点](〔e'quation de demande〕)である。同様にして、(A)で表わした(B)の価格の函数としての(B)の((A)を反対給付とする)需要曲線または需要方程式が得られる。
ここで、部分的曲線 ad,1[#「d,1」は下付き小文字]ap,1[#「p,1」は下付き小文字] または部分的方程式
[#ここから4字下げ]
da[#「a」は下付き小文字]=fa,1[#「a,1」は下付き小文字](pa[#「a」は下付き小文字])
[#ここで字下げ終わり]
を初めとし、他の部分的曲線及び方程式が連続である[#「連続である」に傍点]こと、すなわち pa[#「a」は下付き小文字] の無限小の増加が da[#「a」は下付き小文字] の無限小の減少を生ぜしめることを、何ものも示していない。否反対に、これらの函数はしばしば不連続である。例えば燕麦についていえば、小麦の所有者の第一人は価格が騰貴するに従って、燕麦の需要を減ずるのではなく、たしかに、彼が畜舎に飼養する馬を減じようとするときに、断続的にその需要を減ずるのである。故に彼の部分的需要曲線は、実際においては、a 点を通る階段形の曲線の形(第一図)をとるのである。他のすべての人の曲線もいずれも同様である。しかし全部曲線 Ad[#「d」は下付き小文字]Ap[#「p」は下付き小文字](第二図)は、いわゆる大数の法則[#「大数の法則」に傍点]によって、ほぼ連続であると考え得られる。まことに、価格の極めて小さい騰貴が起るときには、多数の人々のうちおそらく一人くらいは、今まで飼養していた馬のうち一頭を手放すような極限に立っていて、需要を減ずるであろうが、この減少は全需要中の極めて小なる部分の減少に過ぎないであろう。
五三 このようにして、曲線 Ad[#「d」は下付き小文字]Ap[#「p」は下付き小文字] は、(A)の価格の函数としての(A)の有効に需要せられる量を示す。例えば Am[#「m」は下付き小文字] 点の横坐標 Opa,m[#「a,m」は下付き小文字] によって表わされる価格 pa,m[#「a,m」は下付き小文字] における有効需要は、同じ点 Am[#「m」は下付き小文字] の縦坐標 ODa,m[#「a,m」は下付き小文字] によって表わされる Da,m[#「a,m」は下付き小文字] である。そして(B)をもってする(A)の有効需要が、価格 pa,m[#「a,m」は下付き小文字] であるとき、Da,m[#「a,m」は下付き小文字] であれば、(A)と交換に提供せられる(B)の有効供給は、このことだけで、
[#ここから4字下げ]
Ob,m[#「b,m」は下付き小文字]=Da,m[#「a,m」は下付き小文字]pa,m[#「a,m」は下付き小文字](第四五節)
[#ここで字下げ終わり]
となる。これは縦坐標 ODa,m[#「a,m」は下付き小文字] と横坐標 Opa,m[#「a,m」は下付き小文字] によって作られる矩形 ODa,m[#「a,m」は下付き小文字]Am[#「m」は下付き小文字]pa,m[#「a,m」は下付き小文字] によって表わされる。だから曲線 Ad[#「d」は下付き小文字]Ap[#「p」は下付き小文字] は(B)で表わした(A)の価格の函数としての(A)の需要と(B)の供給とを同時に示している。同様に曲線 Bd[#「d」は下付き小文字]Bp[#「p」は下付き小文字] は(A)で表わした(B)の価格の函数としての(B)の需要と(A)の供給とを同時に示すのである。
五四 (B)を所有する多数者の手中にあって市場に現われた総量を Qb[#「b」は下付き小文字] とし、点 Qb[#「b」は下付き小文字] を通る曲線を、xy=Qb[#「b」は下付き小文字] を方程式とする直角双曲線であるとする。直線 pa,m[#「a,m」は下付き小文字]Am[#「m」は下付き小文字] を、この双曲線との交点 Qb[#「b」は下付き小文字] まで延長し、x軸すなわち価格の軸に平行線 βQb[#「b」は下付き小文字] を引け。しからば矩形 OβQb[#「b」は下付き小文字]pa,m[#「a,m」は下付き小文字] の面積 Qb[#「b」は下付き小文字] は、市場に齎《もた》らされた(B)の総量を表わし、矩形 ODa,m[#「a,m」は下付き小文字]Am[#「m」は下付き小文字]pa,m[#「a,m」は下付き小文字] の面積 Da,m[#「a,m」は下付き小文字] pa,m[#「a,m」は下付き小文字] は、価格 pa,m[#「a,m」は下付き小文字] において(A)と交換に提供せられる部分を表わす。従って矩形 Da,m[#「a,m」は下付き小文字]βQb[#「b」は下付き小文字]Am[#「m」は下付き小文字] の面積Yすなわち
[#ここから4字下げ]
Qb[#「b」は下付き小文字]−Da,m[#「a,m」は下付き小文字]pa,m[#「a,m」は下付き小文字]
[#ここで字下げ終わり]
は、同じ価格 pa,m[#「a,m」は下付き小文字] において市場から持ちかえって所有者が保留するであろう部分を示す。一般に、Qb[#「b」は下付き小文字], pa[#「a」は下付き小文字], Da[#「a」は下付き小文字] 及びYの間には、次の関係がある。
[#ここから4字下げ]
Qb[#「b」は下付き小文字]=Y+Da[#「a」は下付き小文字]pa[#「a」は下付き小文字]
[#ここで字下げ終わり]
そして xy=Qb[#「b」は下付き小文字] すなわち Qb[#「b」は下付き小文字] 点を通る曲線は、(B)の存在量を表わす双曲線であるから、Ad[#「d」は下付き小文字]Ap[#「p」は下付き小文字] は、(B)で表わした(A)の価格の如何《いかん》によって、この(B)の量を、(A)と交換に与えるべき部分と保留しておくべき部分とに分ける曲線である。曲線 Bd[#「d」は下付き小文字]Bp[#「p」は下付き小文字] と、
[#ここから4字下げ]
xy=Qa[#「a」は下付き小文字]
[#ここで字下げ終わり]
を方程式とする(A)の存在量の双曲線との間にも、同様
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