齡ハの場合から特殊の場合に進むのがよいのであり、特殊の場合から一般の場合に進むべきではない。天文学者が天体を観測するのに、雲の無い夜を利用しないで、雲の多い時を選ぶべきではあるまい。
四四 交換の現象と競争の機構の基本概念を与えるため、私は、株式市場において金銀貨幣と交換せられる証券の売買を例にとった。けれどもこれらの証券は全く特殊な種類の商品であり、交換に貨幣が介在するのもまた交換の特殊の場合である。私は後に貨幣が介在する交換の研究をするが、当初にはこれを交換価値の一般的事実の研究と混同せぬがよいように思う。そこで私共の本道に立ち帰り、かつ私共の観察に科学的性質を与えるため、任意の二商品のみをとることとする。今これらの二商品を、燕麦と小麦であると仮定してもよければ、または抽象的に(A)、(B)と仮定してもよい。私はA、Bを(A)、(B)のように括弧に収め、量を表わす文字との混同を避けたい。量を表わす文字は方程式に組み込まれる唯一のものであり、(A)、(B)で表わすものは量ではなくして、種類であり、哲学上の言葉を用いれば、本質である。
そこで今、一市場を想像し、そこに(A)を携えながらその一部分を与えて(B)を得ようとする人々が一方から到着し、(B)を所有しその一部分を与えて(A)を得ようとしている人々が他方から到着したとする。この場合にせりの基礎となるものが必要であるから、今は例えば、ある仲買人が、前回の取引の相場通り、(A)のm単位に対し(B)のn単位を与えると想像する。この交換は次の方程式で表わされる。
[#ここから4字下げ]
mva[#「a」は下付き小文字]=nvb[#「b」は下付き小文字]
[#ここで字下げ終わり]
ここで(A)の一単位の交換価値を va[#「a」は下付き小文字] と呼び、(B)の一単位の交換価値を vb[#「b」は下付き小文字] と呼んでおく(第二九節)。
交換価値の比すなわち相対的交換価値を価格[#「価格」に傍点](prix)と一般的に呼び、(A)で表わした(B)の価格、(B)で表わした(A)の価格を、それぞれ pb[#「b」は下付き小文字], pa[#「a」は下付き小文字] で一般的に表わし、比[#式(fig45210_005.png)入る]及び[#式(fig45210_006.png)入る]の値を特にそれぞれμ及び[#式(fi
前へ
次へ
全286ページ中62ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
手塚 寿郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング