X国家に対する三分の利子の要求証券のある量を六〇フランの価格で供給する。かくの如く一定の価格である量の商品が供給せられたとき、この供給を有効供給[#「有効供給」に傍点](offre effective)と呼ぶ。反対に六〇フランまたはそれ以上で買ってもよいとの指図を受けた仲買人は、三分利付公債のある量を六〇フランの価格で需要しているのである。ある価格である量の商品が需要せられるとき、この需要を有効需要[#「有効需要」に傍点](demande effective)と名づける。
 さてこの需要が供給に等しいか、これより多いかまたは少いかに従って、我々は三箇の仮定を設ける。
 仮定一。六〇フランで需要せられる量が、この価格で供給せられる量に等しい場合。これは売手または買手である仲買人がいわばその相手方を他の買手または売手である仲買人に正確に見出す場合である。この場合には交換が行われ、相場は六〇フランを維持し、市場の静止状態すなわち市場の均衡(〔e'quilibre〕)が現われる。
 仮定二。買手である仲買人がその相手方を見出し得ない場合。この場合には六〇フランの価格で需要せられる三分利付公債の量は、この価格で供給せられる量を超過している。理論上交換は中止せられる。六〇・〇五フランまたはそれ以上で買ってもよいとの指図を受けた仲買人がこの価格で需要する。彼らはせり上げる。このせりは二つの結果を生ぜしめる。(一)六〇・〇五フランでの買手となり得ない所の六〇フランの買い手は退く。(二)六〇フランでの売手となり得ない所の六〇・〇五フランにおいての売手が加わってくる。もし彼らが既に指図を与えていないとすれば、彼らは新に指図を与える。かく二つの動因によって、有効需要と有効供給との間に存する隔りは減少する。両者の均等が再び出現すれば、価格の騰貴はそこで停止する。そうでない場合には六〇・〇五フランから六〇・一〇フランに、六〇・一〇フランから六〇・一五フランにと、供給と需要との均等が成立するまで、価格は騰貴する。そして高い相場で、新しい静止状態が現われる。
 仮定三。売手である仲買人がその相手方を見出し得ない場合。この場合には六〇フランの価格で供給せられる三分利付公債の量は、同じ価格で需要せられる量より大である。この場合にも交換は停止する。五九・九五フランまたはそれ以下で売ってもよいとの指図を受
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