洋へかへりました。長く日本にゐた博士は、日本りうに、町の左がはを、あるいてゐました。ところが、その国は、右がは通行の、きそくでしたから、町のまがりかどで、自動車にぶつかつて、大けがをいたしました。
もうりい博士は、びやうゐんで一月あまり、やうじやうをしてゐるうちに、きふに、日本がこひしくなりました。で、かんごふに、日本せいの食物を、何でもいいから、買つてきて下さいといつて、たのみました。すると一時間ばかりたつて、かんごふは日本せいの、くりのくわんづめを、一つ、買つてかへりました。
博士はよろこんで、そのくわんづめの、れつてるを見ました。れつてるには「Gempachi《ゲンパチ》−|Kuri《クリ》」と書いてあります。日本に長くゐた博士は、くりといふ、わけはわかりましたが、げんぱち[#「げんぱち」に傍点]といふ、わけがわかりませんでした。
博士は、日本ごの、じびきをひらいて、みましたが、「たんば栗」「いが栗」「あま栗」などの、ことばは、ありましたが、「げんばちぐり」と、いふことばは、ありませんでした。
博士は、そこにかいてある、五十銭ぎんくわと、西洋人のかほと、さかなかごとの、ゑ
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