て、神さまが、魚屋さんに、ばけて来て、おれに、このぎんくわを、下すつたんだ。さうにちがひない。」
源八さんは、そんなことを思ひながら、夕方の七時すぎに、山のふもとの、小い木ちんやどに、つきました。
そのやどには、さるまはしと、小間もの屋さんとが、とまつてゐました。二人とも、おさけを、のんでゐました。
源八さんは、おさけを、のみたくつて、しやうが、なかつたのですが、神さまから、いただいたお金で、おさけをのんで、またけんくわをしたなら、どんなことに、なるかも知れないと思つて、たうとう、がまんして、おさけは、のみませんでした。
四
源八さんは、国へかへりました。国の人たちは、のんだくれの、源八さんが、かへつてきたといつて、たれも、あひてにする人が、ありませんでした。ところが、源八さんは、びやうきがなほつて、たつしやになつても、さけは、一口ものみません。むろん、けんくわなど、いたしません。
どうして、あんなに、かはつたのだらう、といつて、みんなが、おどろきました。そして、そのわけを、ききますと、源八さんは、
「おれは、さけをのんで、けんくわばかり、してゐたんだが、おれの困
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