》られた上、鞭《むち》で頭をひつぱたかれて、細長い瘤《こぶ》をこしらへて帰つて来ました。

 絵は立派に出来てゐました。
 翌《あく》る朝、愚助《ぐすけ》が学校へ行く前に、また画家《ゑかき》さんに話しました。
「今日はね、お釈迦様の隣りに、イエス・キリスト様を描《か》くんです。此の人もお釈迦様と同じやうに、ダビデ大王といふ偉い王様の子孫でしたが、ユダヤ国の王様にならないで、貧乏人や病人のお友達になつて、親切を尽したので、何にも悪い事をしないのに、悪い人に嫉《そね》まれて殺されたのです。其のイエス・キリスト様が右の手を高くあげて、壺の中を覗《のぞ》いてゐる絵をお描きなさい。終り。」
 画家はびつくりしました。
「それで終りですか。」
「さうです。それで此の掛軸は元の通りに出来るのです。」
 画家は、これでおしまひだといふので、一所懸命にキリスト様の絵を描きました。
 五日間で、立派な絵が出来上りました。そこで村の人達は町から表具屋を傭つてきて、それを掛物にしました。
 二十日目に出来上つた、掛軸は、高さ三メエトル、幅二メエトルでした。書院の床の間に掛けますと、実に立派なものでした。
 村
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