の連鎖に切断の生じない限り人類社会に破滅の来るべき天変地異の生じない限り絶滅しないものである。
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と、あるによっても明らかである。
斯くて、此の三百七呎の高塔から美しい音楽の音の流れ初めたのは千九百十七年十一月二日の正午だったのである。爾来《じらい》十四年間正午と夕刻の二回、時を違えずグレゴリーチャント以後今日まで世界の名曲の一部がチャイムとなって虚空遙かに流れわたるのである。
此の塔が竣成して間もなく、専門家が長い間の研究と実験を経て完成されたチャイムの鐘が十二個イギリスから搬送されて来たのである。最大が四千一百十八斤で最小が三百四十九斤である。そして、今このチャイムをバークレーの町々に、日毎夜毎鳴り響かせている男は、全体どんな男であろう。
一二回あの塔に昇った事のある人だったら、校内を歩いていると、後から元気な声で『ハロー!』と呼びかけられる程彼は物覚えがよい。声はやさしいが雲突くような大男だ。でっくり肥えて、顔は日に焼けて焦茶色である。爛々たる眼光は常に何物かを見つめている習性の持主だという事が誰にも知られる。どうしても年百年中荒潮の中に浪と闘う老船
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