大学生の中で、単に文学と歴史を学ぶもののみに恩沢を与えるにとどまる。それでは完全なる好意と云えない。そこで考えついたのが、此のカムパニールと、大きな校門とであった。高塔は文学の象徴であり、校門は歴史の標号である。毎日毎日三百七|呎《フィート》の高塔から美しい鐘の音が音楽となって鳴り響く。夜も昼も無数の老若男女が流れ来り流れ去る此の校門は、正に歴史のペエジペエジに現われ消え去る人々の姿なのである。
ヨネ野口の師事したウオーキン・ミラーという詩人で名高いバークレーの街を、ずんずん山手に登った所にテレグラフという大通りがある。オークランド方面から此の大学に来るには最も便利な電車通りだ。その北の終点が加州大学であり、そこの入口にある校門が、謂う所のセイサアゲエトで、花崗石の巨大な門柱が中心になって、その外に稍小さい石柱が二本ずつ並んで副門を作っている。柱上には青銅のブリッジが渡されて、セイサアゲエトという文字が浮彫りにされ、礎石には『千九百十五年』という文字が刻まれている。
此の門を入ってアスファルトの歩道を右に折れ更に左に曲ると、カムパニールの下に出る。近づけば近づく程高く見える。それも
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