どこかで、どうん、がらがらと、大へんなひびきが、いたしました。
「あ、うちの鬼瓦が、屋根から、おつこちたのだ。」
 二人は同時に、叫びました。そして、門のところへ、走つて行つてみますと、おほぜいの生徒が、そこに立つてゐて、
「東山の鬼瓦…… 西山の鬼瓦……」と、言つて、さわいでゐました。

 東山の鬼瓦は、まつさかさまに、泉水の中におちたので、角が、めちやめちやに折れて、頭が八つに、われてしまひました。
 西山の鬼瓦は、庭石の上に落つこちて、顔のまん中に、ぽつこりと、大きな穴があいて、眼《め》も鼻も口も、無くなりました。
 ごん七さんは、めちやめちやにわれた、鬼瓦を拾ひあつめながら、
「下らない競争をして、かんじんのしごとを、一月も休んだ。もう、こんな下らない競争はよしませう。」と、言ひました。
 ごん八さんは、顔のまん中に大穴の開いた、鬼瓦をながめながら、
「下らない争をして、註文《ちゆうもん》の瓦をやく事を、すつかり忘れてしまつた。もう、こんな下らない競争は、よしませう。」と、言ひました。

 ごん七さんところの四階は、三階になりました。
 ごん八さんところの四階は、二階になりまし
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