にらめつくらの鬼瓦
沖野岩三郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)今雄《いまを》さんは、

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)夕方|為事《しごと》を

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 今雄《いまを》さんは、五年級甲組の一番でした。
 京一《きやういち》さんは、五年級乙組の一番でした。

 今雄さんのお父さまは、ごん七さんといふ名で、東山《ひがしやま》の中ほどに、大きな家を建てて、瓦屋《かはらや》をしてゐました。
 京一さんのお父さまは、ごん八さんといふ名で、西山《にしやま》の中ほどに、りつぱな家を建てて、瓦屋をしてゐました。

 東山の瓦屋と、西山の瓦屋とは、いつも競争をして、おたがひに、自分のうちで焼いた瓦の、自慢を言ひ合つてゐました。
 東山へ、瓦を買ひに行きますと、ごん七さんは、じまんらしく、
「私《わたし》どもの瓦は、西山さんのやうに、寒さにめげて、こはれるやうな、そんな不出来な品ではありません。」と、言つて、こつこつと、石ころで、瓦をたたいて見せます。
 西山へ、瓦を買
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