前から、ごん七さんは、四階にのぼつて、障子を開けて、西山の方をながめてゐました。同じやうに、ごん八さんも四階の窓から、東山の方を、ながめてゐました。そして、電燈のついた時、二人は一度に、
「おやおや。これはどうした事だ。」と、叫びました。

 あくる朝、学校の入口で、京一さんと、今雄さんとは、ばつたり出あひました。そして、二人は黙つて、手をにぎりながら、につこり笑ひました。

 夕方、京一さんが、四階の屋根にのぼりますと、今雄さんは、旗をふつて、相図をしました。
「ぼくのうちの おにがはらの くちへ はなびを しかけて 五じから 三十ぷんおきに ひをふくやうに します。」それを見た京一さんは、お父さまの所へ行つて、
「お父さま、こつちの鬼の眼に、電気をつけると、向ふの鬼瓦にも、電気がつくんだもの、今夜は、あの鬼瓦の口から、三十分毎に、火を吹くやうに、花火をしかけてやらうぢやありませんか。さうすれば、東山の鬼瓦も降参して、角を折つてしまひますよ。」と、申しました。
 ごん八さんは、大へん喜んで、直ぐ、花火屋さんを呼んで来て、鬼瓦の口へ、花火をしかけました。そして、家内や職人たちが、みんな
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