、二足ばかり早く、決勝点に入りました。
 今度は東の方から、しきりに、
「たたいても、こはれない方万歳。」を、くりかへして叫びました。けれども、今雄さんと京一さんは、にこにこ笑ひながら、手をにぎつて別れました。

 ごん七さんは、瓦がよく売れるので、お金がうんとたまりました。で、東山の景色のいいところへ、立派な二階造りの家《うち》を建てました。
 ごん八さんは、それを見て、西山の景色のいい所へ、三階造りをたてました。
 ごん七さんは、まけてはならないと思つて、二階の上に、また一階をたてそへました。
 ごん八さんは、三階の上に、また一階をたてそへました。
 ごん七さんも、三階を四階にしました。
 ごん八さんは、とても大きな鬼瓦を作つて、四階の屋根の上にのせました。その鬼は、恐ろしいかほで、ごん七さんのおうちの方を、朝も晩も、にらみつけてゐます。
 ごん七さんも、まけぬ気になつて、もつと大きな鬼瓦を作つて、四階の上にのせました。それは世にもめづらしい、恐ろしい、かほつきの鬼瓦でした。それが、朝も晩も、西山の鬼瓦を、にらみつけてゐます。

 今雄さんと京一さんとは、相かはらず、仲よく遊んでゐ
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