、少し大きく成つたかと思ふと一夜の中にも滅切と太つて幾日も經たないのに抱へて重い程になるので有ます。丁度靜かな沼の水に※[#「くさかんむり/行」、第3水準1−90−82]菜《あささ》の花が泛《う》いて居るやうに黄色な小さな花は甜瓜《まくは》であります。一番に捌けのいゝ西瓜と甜瓜とが餘計に作られてある畑の隅の方に二畝三畝《ふたうねみうね》白い花が此れも靜かな沼の水に泡が泛いたとでもいふやうに、ぽつちりと開きました。其處には白い瓜が成りました。白い瓜と隣合うた畝《うね》には此も地味な花が見えました。そこには深い青みをもつた瓜が成りました。それで孰《どちら》も大きな形を横へましたが、其うちでも青い瓜は一層大きく丈夫相でありました。白い瓜の白い皮の下には白い快《い》い肉が包まれて居ますし、青い瓜の青い皮の下にはほんのりと青い爽かな潤ひを持つて居ます。孰《どちら》も他の西瓜や甜瓜のやうに甘い味を持つて生《なま》の儘稱美されるものではありません。
 然し二つに割つて鹽で壓《お》す時には其齒切のいゝことが凉しさを添へるやうで、西瓜や甜瓜のやうにどうかすると飽きられるといふやうなことは嘗《かつ》てない
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