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尚さま/″\におもひつゞけて
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我を思ふ母をおもへばいづべにかはぐゝもるべき人さへ思ほゆ
我病めば母は嘆きぬ我が母のなげきは人にありこすなゆめ
生命あらば見るよしもあらむしかすがに人やも母といはゞすべなし
我がおもふ人はさきはへ世の中のなべての母は皆嘆けども
おもかげに母おもひ見れば人遂に母たりなむと思ひ悲しも
我が母の肉《しゝ》のゆるびは嘆き故あを思ふ故にわれすべもなし
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一月廿六日、彼の袱紗ゆくりなく手にとることありしに、糸巻の型の染め抜かれたるが今更に目に映れば
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とこしへに解かむすべなし苧環《をだまき》のあまたはあれど手にもとれねば
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をだまきといへばすゞろに懷しき故郷の庭なる※[#「耒+婁」、第4水準2−85−9]斗菜のうへにも及びぬれば
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あまたゝび冬には逢へど枯れざりし庭の※[#「耒+婁」、第4水準2−85−9]斗菜《をだまき》かれなくてあれな
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此の日、ひねもすに雨ふる、なにごとにも母の
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