長塚節歌集 下
長塚節

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)街《ちまた》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)紙|貼《は》る

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「耒+婁」、第4水準2−85−9]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ます/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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 明治四十四年


    乘鞍岳を憶ふ

落葉松の溪に鵙鳴く淺山ゆ見し乘鞍は天に遙かなりき

鵙の聲透りて響く秋の空にとがりて白き乘鞍を見し

我が攀ぢし草の低山木を絶えて乘鞍岳をつばらかにせり

おほにして過ぎば過ぐべき遠山の乘鞍岳をかしこみ我が見し

乘鞍と耳に聲響きかへり見て何ぞもいたく胸さわぎせし

おもはぬに天に我が見し乘鞍は然かと人いはゞあらぬ山も猶

くしびなる山は乘鞍かしこきろ山の姿は目にかにかくに

乘鞍をまことにいへば只白く山の間に見し峰をそを我れは

うるはしみ見し乘鞍は遠くして一目といへ
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