［＃ここから６字下げ］
二十二日、觀世音寺にまうでんと宰府より間道をつたふ
［＃ここで字下げ終わり］
稻扱くとすてたる藁に霜ふりて梢の柿は赤くなりにけり
［＃ここから６字下げ］
彼の蒼然たる古鐘をあふぐ、ことしはまだはじめてなり
［＃ここで字下げ終わり］
手を當てゝ鐘はたふとき冷たさに爪叩き聽く其のかそけきを
［＃ここから６字下げ］
住持は知れる人なり、かりのすまひにひとしき庫裏なれども猶ほ且かの縁のひろきを憾む
［＃ここで字下げ終わり］
朱欒植ゑて庭暖き冬の日の障子に足らずいまは傾きぬ
［＃ここから６字下げ］
二十五日、氣候激變してけさもはげしき北吹きてやまず、さゝやかなる店に蔬菜のうれのこりたるも哀れなり
［＃ここで字下げ終わり］
うるほへば只うつくしき人參の肌さへ寒くかわきけるかも
［＃ここから６字下げ］
二十六日、百穗氏の來状に接す、寒雲低く垂れて庭に落葉を焚くなどあり
［＃ここで字下げ終わり］
幾ばくの落葉にかあらむ掃きよせて竈《くど》には焚かず庭にして焚く
落葉焚きて寒き一夜の曉は灰に霜置かむ庭の土白く
［＃ここから６字下げ］
二十九日、筑後國なる
前へ
次へ
全44ﾍﾟｰｼﾞ中41ﾍﾟｰｼﾞ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
ﾄｯﾌﾟﾍﾟｰｼﾞ
登録
ご利用方法
ﾛｸﾞｲﾝ
携帯用掲示板ﾚﾝﾀﾙ
携帯ｷｬｯｼﾝｸﾞ