下げ終わり]

ひそやかに下枝ばかりにひらきたる山茶花白くこぼれたり見ゆ

山茶花はさけばすなはちこぼれつゝ幾ばく久にあらむとすらむ

[#ここから6字下げ]
十六日、このごろ熱低くなりたれば、始めて人をたづねていづ、空晴れて快し
[#ここで字下げ終わり]

不知火の國のさかひにうるはしき背振の山は暖かに見ゆ

[#ここから6字下げ]
ひとの垣に添うてゆく
[#ここで字下げ終わり]

山茶花はあまたも散れば土にして白きをみむに垣内《かきち》には立つ

[#ここから6字下げ]
雀の好む木なれば必ずさへずりかはすをみる
[#ここで字下げ終わり]

山茶花に雀はすだくときにだに姿うつくしくあれなとぞおもふ

[#ここから6字下げ]
わかき女のさげもてゆくものを
[#ここで字下げ終わり]

手に持てる茶の木の枝に括られて黄に凝りたる草の花何

[#ここから6字下げ]
十九日、復たいでありく、朱欒の青きがそここゝの店に置かれてまだ一つ二つは殘りたらむとおもふに、梢に垂れたるは皆既にいろづきたるにおどろく
[#ここで字下げ終わり]

竿に釣りて朱欒《ざぼん》のうへの白足袋は乾きたるらし動きつゝみゆ
前へ 次へ
全44ページ中40ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング