松崎といふところに人をたづぬることありて朝つとめて立つ、おもはぬ霜ふかくおりたるに此の如きは冬にいりてはじめてなりといふ
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芒の穗ほけたれば白しおしなべて霜は小笹にいたくふりにけり

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此の日或る禪寺の庭に立ちて
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枳※[#「木+惧のつくり」、第4水準2−15−7]《けんぽなし》ともしく庭に落ちたるをひらひてあれど咎めても聞かず

たま/\は榾の楔をうちこみて樅の板挽く人もかへりみず

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十二月七日、程ちかく槭をおほく植ゑたるあり、けふは塀の外に散り敷ける落葉を掃きて、松葉のまじりたるまゝに火をつけて燒く
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そこらくにこぼれ松葉のかゝりゐる枯枝も寒し落葉焚く日は

いさゝかの落葉が燒くるいぶり火に烟は白くひろごりにけり

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夜にいりて空俄に凄じくなりたれば、戸ははやく立てさせて
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時雨れ來るけはひ遙かなり焚き棄てし落葉の灰はかたまりぬべし

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八日
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松の葉を繩に括りて賣
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