々々と呼ぶ聲もすゞしく朝の嗽ひせりけり

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三十日、雨つめたし、百穗氏の秋海棠を描きたる葉書とりいだしてみる、庭にはじめてさけりとあり
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うなだれし秋海棠にふる雨はいたくはふらず只白くあれな

いさゝかは肌はひゆとも單衣きて秋海棠はみるべかるらし

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ゆくりなくも宿のせまき庭なる朝顔の垣をのぞきみて
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秋雨のひねもすふりて夕されば朝顔の花萎まざりけり

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十月一日、庭のあさがほけさは一つも花をつけず
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朝顔の垣はむなしき秋雨をわびつゝけふも復たいねてあらむ

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病院の門を入りて懷しきは、只※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]頭の花のみなり
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※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]頭は冷たき秋の日にはえていよ/\赤く冴えにけるかも

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十日、再び秋草のたよりいたる、萎えたるこゝろしばらくは慰む
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刈萱と秋海棠とまじりぬと未だはみねどかなひたる
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