ひたすら物に怖れどもおのれ健かに草に居て鳴く
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十四日
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蝕ばみて鬼灯赤き草むらに朝は嗽ひの水すてにけり
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午に近くたま/\海岸をさまよふ
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草村にさける南瓜の花共に疲れてたゆきこほろぎの聲
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海もくまなく晴れたれば、あたりは只一時に目をひらきたるがごとし
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鯛とると舟が帆掛けて亂れゝば沖は俄かに濶くなりにけり
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豊後國へわたる船を待たむと此の日内海にいたりてやどる
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此の宵はこほろぎ近し廚なる笊の菜などに居てか鳴くらむ
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十八日、きのふ別府の港につきてけふは大分の郊外に石佛を探り汗ながしてかへれるに、夕近くなりて慌しく肌衣とりいだす
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こゝろよき刺身の皿の紫蘇の實に秋は俄かに冷えいでにけり
二
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二十二日、博多なる千代の松原にもどりて、また日ごとに病院にかよふ
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此のごろは淺蜊
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