枕に疊のあとのこちたきに幾時われは眠りたるらむ
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懶き身をおこしてやがて呆然として遠く目を放つ
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うるはしき鵜戸《うど》の入江の懷にかへる舟かも沖に帆は滿つ
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渚にちかく檐を掩ひて一樹の松そばだちたるが、枕のほとりいつしか落葉のこぼれたるをみる
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松の葉を吹き込むかぜの涼しきに咽びてわれはさめにけらしも
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二日、油津の港へつきて更に飫肥にいたる、枕流亭にやどる、欄のもと僅に芋をつくりたるあり心を惹く
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ころぶせば枕に響く淺川に芋洗ふ子もが月白くうけり
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四日、油津の港より乘りて外の浦といふところへわたる、漸くにして探しあてたるはわびしき宿なれども靜かなる入江もみえたれば、もとより戸は立てしめず、閾の際に枕したれば月はまどかにして蚊帳のうちをうかゞふ
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※[#「巾+廚」、第4水準2−12−1]越しに雨のしぶきの冷たきに二たびめざめ明けにけるかも
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六日、波荒き海上を折
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