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痺れたる手枕解きて外をみれば雨打ち亂し潮の霧飛ぶ

噛みさ噛み疾風は潮をいぶく處《ど》に衣も疊もぬれにけるかも

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二十六日、漸くにして晴る、やどは松林のほとりにひとり離れて建てられたるが、道も庭も松葉散り敷きてあたりは狼藉たり
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木に絡む糸瓜の花は此の朝は萎えてさきぬ痛みたるらむ

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おなじく松林のほとり、少し隔てゝ壁くづれ落ちてかつかつも住みなしたるあり、けさは殊に凄じきさまに
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しめりたる松葉を竈《くど》に焚くけぶり糸瓜の花にまつはりてけぬ

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二十七日、宮崎にのがる、明くれば大淀川のほとりを※[#「彳+淌のつくり」、第3水準1−84−33]※[#「彳+羊」、第3水準1−84−32]ふ
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朝まだき涼しくわたる橋の上に霧島低く沈みたり見ゆ

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三十一日、内海の港より船に乘りて吹毛井といふところにつく、次の日は朝の程に鵜戸の窟にまうでゝ其の日ひと日は樓上にいねてやすらふ
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