夜はへなば涼しかるらむ
月見草けぶるが如くにほへれば松の木の間に月缺けて低し
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八月一日、病棟の蔭なる朝顔三日ばかりこのかた漸くに一つ二つとさきいづ
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嗽ひしてすなはちみれば朝顔の藍また殖えて涼しかりけり
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三日夕、整形外科の教室の蔭に手をたてゝおびたゞしく絡ませたるをはじめてみて知る、餘りに日に疎ければ
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朝顔の赤は萎まずむき捨てし瓜の皮など乾く夕日に
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四日
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あさがほの藍のうすきが唯一つ縋りてさびし小雨さへふり
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彼の垣根のもとに草履はきておりたつ
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朝顔のかきねに立てばひそやかに睫にほそき雨かゝりけり
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六日
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かつ/\も土を偃ひたる朝顔のさきぬといへば只白ばかり
鍼の如く 其の五
一
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八月十四日、退院
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朝顔は蔓もて偃へれおもはぬに榊の枝に赤き花一つ
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