下げ終わり]

はかなくもよひ/\毎に蚊の居らぬ※[#「巾+廚」、第4水準2−12−1]なれかしとおもひ乞ひのむ

    鍼の如く 其の四

     一

[#ここから6字下げ]
七月十七日、構内の松林を※[#「彳+淌のつくり」、第3水準1−84−33]※[#「彳+羊」、第3水準1−84−32]す、煤煙のためなればか、梢のいたく枯燥せるが如きをみる
[#ここで字下げ終わり]

油蝉乏しく松に鳴く聲も暑きが故に嗄れにけらしも

[#ここから6字下げ]
いづれの病棟にもみな看護婦どもの其詰所といふものゝ窓の北蔭にさゝやかなる箱庭の如きをつくりてくさ/″\の草の花など植ゑおけるが、夕毎に三四人づゝおりたちて砂なれば爪こまかなる熊手もて掃き清めなどす、十九日のことなり
[#ここで字下げ終わり]

水打てば青鬼灯の袋にも滴りぬらむ黄昏にけり

[#ここから6字下げ]
かゝる時女どもなればみな/\さゞめきあへるが、ひとり我がために撫子の手折りたるをくれたれば
[#ここで字下げ終わり]

牛の乳をのみてほしたる壜ならで※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]すもの
前へ 次へ
全44ページ中26ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング