り松がさか動くその雀等は

松蔭の蚊帳釣草にころぶしていさゝか痒き足のばしけり

かくのごと頬すりつけてうなづけば蚊帳釣草も懷しきかも

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窓外
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ポプラーと夾竹桃とならびけり甍を越えてポプラーは高く

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四日深更、月すさまじく冴えたり
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硝子戸を透して※[#「巾+廚」、第4水準2−12−1]に月さしぬあはれといひて起きて見にけり

小夜ふけて竊に蚊帳にさす月を眠れる人は皆知らざらむ

さや/\に※[#「巾+廚」、第4水準2−12−1]の殺げばゆるやかに月の光はゆれて涼しも

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目さめてさま/″\のことを思ふ
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かゝるとき扁蒲畑《ゆふがほばた》に立ちなばとおもひてもみつ今は外に出でず

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七日
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よひ/\に必ずゆがむ白蚊帳に心落ちゐて眠るこのごろ

白蚊帳に夾竹桃をおもひ寄せ只快くその夜ねむりき

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厭はしきは※[#「巾+廚」、第4水準2−12−1]の中の蚊なり
[#ここで字
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