草苺洗ひもてれば紅解けて皿の底には水たまりけり

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三日微雨、人にあふこといできにたれば車に幌かけて出づ、鬼怒川をわたる
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みやこぐさ更紗染めたる草むしろしづかにぬれて霧雨ぞふる

口をもて霧吹くよりもこまかなる雨に薊の花はぬれけり

鬼怒川の土手の小草に交じりたる木賊の上に雨晴れむとす

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四日、晴れて俄に暑し、風邪引くことのおそろしくてためらひ居けるを、いまはなか/\に心も落ちゐたれば單衣になる
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とりいでゝ肌に冷たきたまゆらはひとへの衣つく/″\とうれし

くつろぐと足を外に向けころぶせば裾より涼し只そよ/\と

さやげども麥稈帽子とばぬ程みむなみ吹きて外はすが/\し[#「すが/\し」は底本では「すが/″\し」]

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暑きころになればいつとても痩せゆくが常ながら、ことしはまして胸のあたり骨あらはなれど、單衣の袂かぜにふくらみてけふは身の衰へをおぼえず、かゝることいくばくもえつゞくべきにあらざれど猶獨り心に快からずしもあらず
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單衣きてこゝ
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