かり足駄の齒にわびしけれど心ゆくばかりのながめせんとてまたいでありく
[#ここで字下げ終わり]
鉈豆のもの/\しくも擡げたるふた葉ひらきて雨はふりつぐ
車前草《おほばこ》は畑のこみちに槍立てゝ雨のふる日は行きがてぬかも
[#ここから6字下げ]
庭の枇杷ことしばかりはめづらしく果おほし
[#ここで字下げ終わり]
枇杷の木にみじかき梯子かゝれどもとるとはかけじいまだ青きに
[#ここから6字下げ]
雨をよろこぶこゝろを
[#ここで字下げ終わり]
蕗の葉の雨をよろしみ立ちぬれて聽かなともへど身をいたはりぬ
[#ここから6字下げ]
我が草苺を好むこと度を知らずともいひつべし、未だ甚だしく體力の衰へざりし程は一度に五合にのぼらざれば胸の爽かなるを覺えず、然かも日に幾たびとなくこれをくりかへして飽くこともなかりき、さるをことしは家を離れて久しくなりけるに市場に出でたるは嘗て手にだも觸れむとせざれば、日頃はさびしくあかしけるが、いまはうれしきは門の畑なり
[#ここで字下げ終わり]
たらちねは笊もていゆく草苺赤きをつむがおもしろきとて
幾度か雨にもいでゝ苺つむ母がおよびは爪紅をせり
前へ
次へ
全44ページ中19ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング